共働き30歳夫「ペアローンで住宅ローン減税をフル活用する方法が知りたい」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、30歳、会社員の男性。共働きの妻(30歳)とともに、ペアローンで6,000万円のマンションを購入予定。踏み切っていいのか、また得するローンの組み方が知りたいと言います。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

共働きの会社員夫婦です。

6,000万円の新築マンションを購入しようと思っていますが、来年子どもが生まれる予定なので、家計を踏まえて購入に踏み切ってよいかを知りたいです。また、夫婦ペアローンで住宅ローン減税をフル活用するローンの組み方を教えてください。

* 頭金1,000万円(直系尊属贈与)

* 借入額5,000万円

* 金利0.5%

* 返済期間35年

を想定しています。

【相談者プロフィール】

・男性、30歳、会社員、既婚

・同居家族について:妻(30歳)、会社員。2022年2月に出産予定

・住居の形態:賃貸(神奈川県)

・毎月の世帯の手取り金額:60万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:180万円

・毎月の世帯の支出の目安:60万円(余剰金は投資信託購入に充当)

【毎月の支出の内訳】

・住居費:12万8,000円

・食費:7万円

・水道光熱費:1万3,000円

・保険料:2万円

・通信費:1万2,000円

・車両費:2万1,000円(駐車場台1万6,000円含む)

・お小遣い:4万円

・その他:余剰金は投資信託購入に充当

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:0円

・ボーナスからの年間貯蓄額:150万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,500万円

・現在の投資総額:2,000万円

・現在の負債総額:0円


渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。今回はペアローンの効果的な組み方のご相談です。検討されている物件を購入して大丈夫かどうかも踏まえて考えていきましょう。

「収入合算」と「ペアローン」

住宅ローンを組む際、ひとりで住宅ローンを組む方法と、親子や夫婦で収入を合算してローンを組む方法とがあります。収入を合算して住宅ローンを組む方法には大きく2つの方法があります。それが「収入合算」と「ペアローン」です。

「収入合算」って? メリット・デメリットは?

「収入合算」とは、一定の収入のある親や配偶者の収入を主たる債務者の収入に合算する方法です。収入を合算した金額を基準に住宅ローンを借り入れることが出来るため、ひとりでローンを組むよりは、大きな金額のローンを組むことが出来ます。自分だけの年収では希望する借入金額に満たず、物件を購入出来ない場合などに効果的です。また、主たる債務者に万が一のことがあった場合も、団体信用生命保険にて残債が返済されるため、家族にローンが残らず、安心です。

一方で、ペアローンにも共通して言えることですが、借入金額を増やし過ぎると、どちらかが継続して収入を得られなくなると、返済が苦しくなるというデメリットがあります。

また、団体信用生命には主たる債務者しか加入できないため、収入合算している連帯保証人に万が一のことがあってもそのまま返済が継続になることや、住宅ローン控除やすまい給付金の対象となるのは主たる債務者のみということも注意点です。

「ペアローン」って? メリット・デメリットは?

「ペアローン」とは、一定の収入のある夫婦でそれぞれが主たる債務者として住宅ローンを組む方法です。ペアローンは、収入合算と異なり、それぞれが主たる債務者になってローンを組むことになるので、両方とも住宅ローン控除を受けることが出来ます。また、それぞれが団体信用生命保険に加入するため、どちらかに万が一のことが起こった場合は、片方の住宅ローンは免除となるため、保障としての機能も最大限発揮できます。

ただし、2本の住宅ローンを組むため、事務手数料などの諸費用がどちらにも掛かるため、費用負担は増えることになります。

「収入合算」も「ペアローン」もお二人の収入が継続して続く前提での借入金額となるため、これから出産を控えている夫婦は、出産後の働き方についてもしっかりと考えておいた方が良いでしょう。

適正な住宅ローン金額は?

では、ご相談者にとって、適正な住宅ローンの金額はどれくらいでしょうか。

住宅ローンの借入れ額の目安としては、年間の返済額を年収の20~25%に抑えた方が良いでしょう。今回、ご相談者の世帯年収を手取り額から逆算して1,200万とします。

1,200万円×20~25%=240~300万円÷12カ月=20~25万/月

となりますので、月々の返済が25万円以内におさまるような住宅ローン金額にすると良いでしょう。注意点は、あくまで現在のご夫婦二人の年収を元に計算しているので、仮にご主人様おひとりの年収が700万だとすると、

700万円×20~25%=140~175万円÷12カ月=11.6~14.6万/月

となります。すなわち、出産後の奥様の働き方や想定できる年収によって借入額が変わってきます。今回検討されているのが5,000万円のローンです。金利0.5%で借入期間35年の場合、月々の返済額は約13万円/月となります。

仮にご主人お一人の収入でも一応適正な範囲内におさまっているといえるでしょう。もちろん、個々の生活の仕方によって適正金額は変わってきますので、将来の夫婦の働き方も含めてしっかりと考えましょう。

ペアローンを最大限に活用するには?

次に、ペアローンにて住宅ローン控除を最大限に活用する組み方についてです。

住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高の1%が、所得税と住民税の一部から控除される制度です。控除額は、一般的な住宅で最大40万円(年末残高等4,000万円まで)、認定長期優良住宅または認定低炭素住宅では50万円(同5,000万円)となります。控除はまずは所得税額から行われ、所得税では控除しきれない場合は個人住民税からも控除できます。住民税から控除できる金額は、課税総所得金額の7%または13万6,500円のいずれか小さいほうの金額が上限となります。

ご主人様の年収が700万円とすると、概算で所得税が約32万円となります。すなわち、所得税から控除できるのは32万円までとなるので、住民税の13万6,500円を加えても、最大で45万6,500円の控除ということになります。

仮に認定長期優良住宅だとすると、5,000万借入れし、残債が4,500万円以上ある時は、控除枠を最大限使い切れないことになります。奥さまの年収を500万とすると所得税約14万円となります。よって、ローン控除を最大限活用するためには、

1)夫:4,000万円 妻:1,000万円
2)夫:3,000万円 妻:2,000万円

このあたりを基準に検討されると良いでしょう。

夫婦の働き方をじっくり考慮して

奥さまに関しては、育休中や復職後も時短などで収入が一時的に下がることもあるので、住宅ローン控除のみにフォーカスを当てると、ご主人様の借入額を増やしておいた方が良いでしょう。

住宅ローンを組めば、団体信用生命保険という保障が付加されます。万が一の時の保障にもなりますので、そのバランスも考慮する必要があります。

住宅ローンを組む前に最適な方法を選ぶのも重要ですが、何よりも大事なのは、ローンを組んだ後の返済計画になります。ぜひ、今後のご夫婦での働き方や、収入予測をもとに最適なローンの組み方を選択してください。

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