長崎県内の飲食店、客足期待も複雑… 緊急事態宣言 佐世保除き12日解除へ

長崎市中心部を行き交う市民ら。まん延防止等重点措置などの解除に不安の声もある=9日午後0時15分、同市築町

 新型コロナウイルス感染対策として、長崎県に適用されているまん延防止等重点措置の解除が決まり、県独自の緊急事態宣言と飲食店などへの営業時間短縮要請も、佐世保市を除いて12日までで解除されることになった。飲食店が客足の回復に期待する半面、県民からは「解除で広がらないか」と不安の声も少なくない。宣言と時短要請が続く佐世保市の飲食店からは「感染者がまだ多い。仕方ない」とため息が漏れた。
 「店を開けることによる感染の不安はある。でも従業員や自分の生活、家賃ももある」。長崎市銅座町でスナックを経営する60代女性は複雑な心境を淡々と語った。重点措置で酒類が提供できず、8月下旬から休業を余儀なくされている。店は13日以降に再開予定。「開けるからには以前のようにお客さんを呼べるように頑張るだけ」と前を向いた。
 県によると、9月1~7日の新規感染者のうち、10代以下が111人と約3割を占め、児童生徒は95人に上る。娘2人が公立の中学と高校に通う長崎市内の40代の女性は、県内の学校でクラスターが出ている現状を憂慮。「部活動も再開する。誰かが感染していたら一気に広がる可能性もある」と不安を口にした。西彼長与町の団体職員、山下満さん(58)も「(コロナは)子どもたちにも容赦ない。ここまで我慢したので、もう少し落ち着くまで延ばせればというのが本音」。
 県医師会の森崎正幸会長は「新規感染者はまだ高止まりの印象」とし「患者を受け入れている基幹病院関係者からは9月末まで重点措置の継続が必要という声もある」と医療体制の逼迫(ひっぱく)を懸念。一方で、従業員や客が2回のワクチン接種を終えていたり、県の認証を受けたりしている飲食店については「営業時間や酒の提供時間を緩和するなどのメリハリがあってもいいのではないか」と述べた。
 「終日酒類提供禁止」は緩和されたものの、月末まで宣言と時短要請が延長された佐世保市。栄町で和食居酒屋を経営する江頭良隆さん(70)は「仕方ない。酒が出せるようになるだけでもありがたい」と受け止めた。ただ「今の協力金では全然足りない。家賃を半分補助するなどもっと支援してほしい」。窮状をそう訴える。


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