コンコルド効果

 〈「いつ始めるか」を決めるのは難しいが、「いつやめるか」の決断はもっと難しい〉-本紙情報面の人気コラム「歳々元気」が2年ほど前、こんな書き出しで「コンコルドの誤謬(ごびゅう)」という経済用語を紹介している▲英仏の共同プロジェクトで生まれた優美な機体の超音速旅客機は、燃費が悪い、定員が少ない-などいくつか大きな欠点があり、開発途上で採算性の厳しさが指摘された。だが、いったん動きだした計画は止められず、赤字を膨らませながら空を飛び続けた▲一つの事業で、ある時点までに投資されて回収できない費用のことを経済学ではサンクコスト(埋没費用)と呼ぶ。「コンコルド効果」は、このコストを惜しんで引くに引けない心理的圧迫を言う言葉。いろんな場面で誰にも覚えのある感覚でもある▲東彼川棚町の石木ダム建設事業で、県が一昨日、ダムの本体工事に着手した。事業採択から46年。半世紀近い時間が経過している▲事業が長く実現できずにいることと、ダムの必要性とを単純に結び付けて論じるのは乱暴だろう。ただ、過去の投資や時間や経過や労力を惜しむあまり、判断が歪んでいないか-を、繰り返し問い直す姿勢を行政には求めたい▲冒頭のコラムは〈引き際の決断にこそ、勇気と知性が求められる〉と結ばれていた。(智)

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