阪神・大山悠輔の復調は“時間の問題”だった?! データで紐解く不振の要因

阪神・大山悠輔【写真:荒川祐史】

9月に入って打率.400、2本塁打8打点と上昇気配の大山

阪神は9日のヤクルト戦に3-13の大敗を喫し、2位の巨人との差は2ゲームとなった。不振で苦しんでいた主砲の大山悠輔内野手が復調の気配を見せている。

8日の同戦では勝負を決める一発、そして9日はマルチ安打をマーク。今季はここまで96試合で打率.249、16本塁打57打点の成績を残しているが、昨季と比べて大きく数字を落としている。9月に入って打率.417、2本塁打8打点と状態を上げてきているものの、その成績が本来のものとは程遠いと言える。

では、大山の不振の要因は一体どこにあったのだろうか。セイバーメトリクスの指標などを用いてデータ分析を行う株式会社DELTAのデータを用いて検証してみたい。

打撃指標「BABIP」は昨季から大きく低下…

大山の今季の打撃指標を見ていくと、昨季と比べて大きく数字が落ちている項目がある。それが「BABIP」だ。

この指標は本塁打とファウルを除く打球(ファウルフライは含む)のうち、安打となった割合を表すもの。セイバーメトリクスではフェアゾーンに飛んだ打球がヒットになるかどうかは“運”の要素が強いとされ、多くの機会数を経ると、この「BABIP」はリーグ平均値に収束していくとされる。

この平均値というのはだいたい.300前後とされる。足の速い選手や打球の速い選手などはこれよりもやや高くなる傾向があるものの、どの選手も個々の平均値にいずれ回帰していくと考えられる。

この「BABIP」を見ると、これまで平均して.300前後で推移していた大山だが、今季はここ5年で最も低い.252となっている。ヒット性の当たりが野手の守備範囲に飛んで安打にならなかったり、と言った“運”に恵まれない部分があったことになる。「BABIP」からすれば、大山の復調はそれなりに期待できたと言える。

コース別打率やコンタクト率からは高めの対応に課題が…

とは言え、“運”だけでないのも事実。コース別の打撃成績を見ると、昨季との違いが浮かび上がってくる。昨季のコース別成績を見ると、大山は高めの対応に強みがあった。真ん中高めや内角高めのゾーン内は1割台だったものの、ゾーンを外れる高めのボールで高いアベレージを残し、コース問わず真ん中の高さでは強さを発揮していた。

だが、今季の成績を見ると、高めのゾーンはゾーン内、ゾーン外ともに低いアベレージとなっている。同様にボールを当てた割合を表す「コンタクト率」もコース別に見ると、昨季に比べて今季は高めで下落傾向にある。これまで得意としていた高めの対応に苦労し、打撃の状態を落としていたと読み解くことができる。

9月に入って打撃の状態が上向きつつある大山。2005年以来、16年ぶりのリーグ優勝を目指す阪神にとって、主砲の復活はこの上ない追い風となるはずだ。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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