巨人・陽岱鋼〝109試合目の初スタメン〟に込められた原監督の深謀遠慮

今季初先発出場した陽岱鋼だが…(東スポWeb)

これが原監督流の戦力見極め術なのか――。巨人は10日の中日戦(東京ドーム)に1―10と大敗し今季ワーストの5連敗。6月24日以来、78日ぶりとなる3位に転落した。リーグV3に向けて暗雲が垂れ込めてきたが、ライバル球団からは「ここで陽岱鋼を初スタメンに起用するとは」と驚きの声が飛び出した。果たして指揮官の狙いとは?

負の連鎖はそう簡単には断ち切れなかった。チーム勝ち頭の10勝左腕・高橋が初回、先頭の京田に初球を右翼スタンドに運ばれた。2回にも福田にソロを浴びた高橋は3被弾で5回途中5失点KO。一方、G打線は昨年の沢村賞左腕・大野雄の前に4回、岡本和が36号ソロを放つのがやっとだった。

8戦連続白星なしの5連敗。首位阪神と3ゲーム差の3位に原監督は「まあ勝負の世界、いろんなことが起きうるんでね。そこはしっかり受け止めて、明日からまた、っていうところですね」と前を向いた。

そんななかライバル球団が「ここでその手に出たか」とうなったのが、重要な一戦での陽岱鋼外野手(34)の「1番・右翼」での初スタメンだった。5年契約最終年の陽岱鋼は二軍でも打率2割4分と調子の上がらないまま、8月28日に初の一軍昇格。ここまで2打数無安打と守備固め要員となっていた。

前夜のDeNA戦で9回に3点差を追いついての引き分けに指揮官は「バッティングは気持ちか!? 技術じゃない!」と話していた。発奮を期待された陽岱鋼は3回の第2打席で大野雄からチーム初安打となる右前打。7回二死一、二塁では右邪飛に倒れ、4打数1安打で交代となった。

原監督は「1本出たというところはいいと思いますよ。練習では非常にいい状態で来ていると思っているので」とうなずいた。

前出のライバル球団関係者は「五輪後、調子が上がっている大野雄には8月27日の対戦(バンテリン)でも7回まで岡本和のソロ1点に封じられた。誰を起用しても打てる可能性が低い中、尻に火がついた陽岱鋼が〝天敵〟から打てるようなら、来季も残す余地がある。ダメだったらバッサリ切るということでしょう」と原監督の狙いを分析した。

現在の陽岱鋼が追い込まれた状況で力を発揮できるのか。その見極めのために連敗中の大事な1戦を使ったとの見立てだ。11日には新助っ人スコット・ハイネマン外野手(28)が一軍に合流する。同じ右打ちの陽岱鋼は降格候補となっているが…。

この日、土壇場で見せた陽岱鋼の一打は、指揮官の目にどう映ったのか。

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