オリ25年ぶりVの救世主になるか 吉田正離脱の窮地に戻ってきた“悲劇”を知る男

西武戦に先発出場したオリックス・T-岡田【写真:宮脇広久】

T-岡田は10日の西武戦で先制11号&2点目の適時打

■オリックス 7ー1 西武(10日・メットライフ)

パ・リーグが稀に見る激烈な首位争いを展開している。とりわけ注目されるのは、12球団最長の24年間にわたってリーグ優勝から遠ざかっているオリックス。ここにきて主軸の吉田正尚外野手が離脱する緊急事態に陥ったが、入れ替わるようにして、救世主となりそうなベテランが戻ってきた。プロ16年目、33歳のT-岡田外野手だ。近年で最もVに近づいた“2014年の悲劇”を知る選手だけに、思い入れはひとしおのはずだ。

オリックスの頭上に暗雲が垂れ込めたのは今月5日のこと。リーグトップの打率.338をマークし、2年連続首位打者へ驀進していた吉田正が「左ハムストリングスの筋挫傷」で出場選手登録を抹消された。折しもチームは同日のソフトバンク戦に敗れ、77日間守ってきた首位の座から陥落した。

4日後の9日に登録されたのがT-岡田だ。自身も右ハムストリングスを痛めて離脱していたが、同日のロッテ戦で即スタメン復帰。翌10日、敵地メットライフドームで行われた西武戦にも「5番・一塁」で出場し、2回に松本の初球のカットボールをとらえ、右翼席へ先制11号アーチを描いた。「少し詰まっていましたが、浮いてきたボールをしっかり振り切ることができました」と言う自画自賛の一撃。3回にも右前適時打で追加点をもたらし、チームは7-1の大勝を収めた。

人望の厚いベテランの華々しい復帰に、ベンチも沸き返った。30歳の“弟分”で4番を張る杉本裕太郎外野手は、5回にバックスクリーン直撃の25号ソロを放ち、「Tさんばかり目立っていたので、負けたくない気持ちで打席に入っていました」と語った。中嶋聡監督も「打線に厚みが出る。本当にTさん、Tさんなんで、良いと思います」と称賛した。

2014年にソフトバンクと優勝争うもあと一歩で涙をのんだ

オリックス最後のリーグ優勝は、あのイチロー氏が3年連続MVPに輝いた1996年にさかのぼる。その後、2014年も伝説的なシーズンとなった。

この年、森脇浩司監督(現ロッテ野手総合兼内野守備走塁コーチ)に率いられたオリックスは混戦の中、9月25日には残り試合数の関係で2位でありながらマジック7を点灯させた。10月2日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム=現PayPayドーム)は、ソフトバンクが勝てば優勝、オリックスが勝てば残り2試合でマジック1が点灯するという大一番だった。

延長にもつれ込んだ試合は、10回に松田宣浩内野手にサヨナラ打を許し、オリックスは涙を飲んだ。T-岡田はこの年、4年ぶりに20発をクリア(24本塁打)するなど活躍したが、大一番では4打数ノーヒットに終わっている。

あれから7年。チームで2014年を知る選手は、平野佳寿投手、比嘉幹貴投手、安達了一内野手らを含め少数になったが、ようやく悲願成就の好機が訪れている。当時の森脇監督がロッテのベンチにいてライバルとして相対していることも因縁めいている。若手の成長が目覚ましいオリックスだが、25年ぶりの優勝へシーズン最終盤の勝負所で頼りになるのは、やはり経験豊富なベテランの力だ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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