歩きスマホの影響を解明、国内4研究者にイグ・ノーベル賞

人々を笑わせ、考えさせたユニークな研究に贈られるイグ・ノーベル賞の2021年「動力学賞」に京都工芸繊維大学工芸科学部の村上久助教ら日本の大学に所属する研究者4人が選ばれた。受賞の対象となったのは、国際学術誌「Science Advances」に掲載された論文で、歩きスマホの歩行者が他の歩行者と衝突する原因を実証した。

京都工芸繊維大学によると、論文は村上助教と長岡技術科学大学工学部の西山雄大講師、東京大学先端科学技術研究センターのフェリシャーニ・クラウディオ特任准教授、西成活裕教授が共同で発表した。日本人研究者の受賞はこれで15年連続になる。

研究チームは横断歩道などで向かい合って移動する2つの歩行者集団が自然にいくつかの列に分かれる現象に注目し、54人の学生を27人ずつのグループに分けて行動を観察した。

その際、歩行者集団の先頭にいる3人にスマートフォンを持たせ、計算問題を解きながら歩かせたところ、集団全体の歩く速度が遅くなるうえ、衝突を回避しようとして大きく動いて乱れが生じ、衝突の可能性が高まることを見つけた。

村上助教らは歩行者集団の中では互いに他の歩行者の行動を予測しながら動いているが、歩きスマホの歩行者がいると予測が阻害されるためではないかとみている。歩きスマホが当人だけでなく、集団にも悪い影響を及ぼすことが立証された。

授賞式は例年、米国のハーバード大学で開かれるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けオンラインで行われた。

論文情報:

【Science Advances】Mutual anticipation can contribute to self-organization in human crowds

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