カネミ油症 次世代調査記入開始 世間の無理解今も 県内2世ら「診断基準 改定を」

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カネミ油症次世代被害者の健康実態を調べる調査票に記入する下田さん=諫早市内

 長崎県などに多いカネミ油症認定患者の子(2世)と孫(3世)の健康実態調査について、国の全国油症治療研究班(事務局・九州大)は調査票を発送。県内の2世ら次世代被害者が記入を始めている。多様な症状に苦しみながらも影響が未解明の次世代を対象にした初の公的調査。「診断基準の改定につなげて」。大半が油症認定されず救済策もない次世代たちは切実な思いで調査と向き合っている。
 8日午後、油症2世で未認定の下田恵さん(32)=諫早市=は、届いた調査票に記入を始め、あらためて気付いた。「実際に書くと、自分はこんなに症状があるんだなって」。体がだるい、めまい、ゼイゼイする、かゆみ-。ここ数日の自覚症状を尋ねる設問では、約40の選択肢の半分にチェックが付いた。今も頻繁に腫瘍ができ、1年前からぜんそくが再発。体の不調は「年々増える印象」だ。
 1968年の油症発覚後に生まれた次世代は、有害化学物質で汚染された食用油を直接食べていない。しかし油を食べた母親の胎盤や母乳から主因のダイオキシン類が移行し、影響を受けた恐れが指摘されている。
 下田さんは幼い頃から体調の異変が続き、認定患者の母順子さん(60)と同じような症状が多い。だが10年以上受け続けている油症検診では、認定申請が毎回却下。2012年成立の被害者救済法は認定患者のみが対象で、下田さんら多くの次世代は医療費補償などの救済策を受けられない。
 「次世代の現状を伝えたい」。下田さんは8年ほど前からメディアに顔と実名を出し、思いや経験を語ってきた。昨年、支援団体のカネミ油症被害者支援センター(YSC)が独自の次世代調査結果を公表。深刻な実態が明らかになって全国的な報道が増え、ようやく国も調査に乗り出した。
 だが世間の「無理解」は根深い。下田さんは昨年末、足の指に腫瘍ができ皮膚科を受診。医師に油症2世と明かしたが、「関係ないよ」とそっけなく返された。帰りの車中で号泣した。なぜ断言できるのか-。苦しみを否定されたようで悲しく、悔しかった。
 苦しみの根源は、無理解と偏見、そして原因も分からないまま続く体の不調だ。「調査では次世代に多い症状や、親と似た症状などがいっぱい出てくると思う」。下田さんは、調査結果を基にして、次世代被害者が油症認定される基準に早く改善されることを強く願っている。