“対面販売はもう古い” 変わる平壌の小売店 大型店舗のセルフサービス方式を導入

平壌市内の住宅地に位置する小さな食料品店が、従来の対面販売方式をセルフサービス方式に移行させている。十年ほど前から市内の大型百貨店では食料品売り場にセルフサービス方式を導入していた。新方式が小売店にも広がった背景には「生産の拡大」と「商品の多様化」があるという。

従来は販売員と顧客がショーケースなどをはさんで対面して売買した。ソ連・東欧の社会主義圏でも見られた光景だ。販売員は接客に追われ、顧客は順番がくるのを待たなければならない。

店に入り店内を自由に移動しながら買いたい物を自分で手に取り、最後にレジで一括精算する。このような販売方法をセルフサービス方式という。

日本でも一般的なこの販売方法の歴史はそれほど長くない。1930年代、米国におけるスーパーマーケットの誕生と普及に伴って世界中に広がり、日本では50年代に初めて登場した。

光復地区商業センターで買い物を楽しむ市民(C)朝鮮新報

朝鮮で初めてセルフサービス方式を取り入れた販売店は、光復地区商業センター(万景台区域)。2012年の開店当時には海外メディアでも紹介され、注目を集めた。他にも大聖百貨店(大同江区域)、普通江商店(普通江区域)などが知られている。どの店も、食料品や日用雑貨、衣類、おもちゃ、宝飾品、薬品まで幅広く取り扱う規模が大きな施設だが、その中で食料品および日用雑貨売り場にセルフサービス方式が導入されている。

大同江区域にある綾羅2食料品商店は、住民たちが日常的に利用する地域の小売店だ。昨年、セルフサービス方式を導入した。オ・ヨンフィ店長(44)は、「多くの住民が来店し、連日盛況だ。当店では顧客の利便性を最優先しサービスを提供している」と話す。

セルフサービス方式に一新された綾羅2食料品商店(C)朝鮮新報

大型百貨店でのみ実施されてきたセルフサービス方式が、地域の小規模な食料品店に普及した背景について、朝鮮経済に詳しい朴在勲さん(在日本朝鮮社会科学者協会)は「国産品の生産、特に食料品などの生産が安定的に増大しており、また、その品数も多様化してきたことが背景にある」としながら、次のように指摘する。

「資本主義で国では、人件費削減をはじめ、いかにコストダウンしながら多くの商品を販売し利益を上げるかについて追求していく中でセルフサービス方式が生まれた。人民に対する供給という社会主義商業の理念を掲げる朝鮮では、販売コストのダウンよりも、買い物をする人々の利便性を重視してセルフサービス方式を導入しているようだ」

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