ストレスで転職希望の既婚子持ち36歳男性。最適な資産配分とキープすべき年収は?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、36歳・公務員の男性。39歳・会社員の妻と2人の子どもと暮らす相談者。仕事上の責任とストレスが増え、転職を考えているといいますが、教育費や老後を考えたとき、最適な資産配分とキープすべき年収は? FPの伊藤亮太氏がお答えします。

こんにちは。私の現状ですが、特段お金をたくさん使う趣味もなく貯蓄をし続け一定の資産を積み上げることができました。特段目的もなく積み上げてきたので、リスクが少ないと思い定期預金と社債を中心に運用してきました。

最近仕事上の責任も増えストレスが大きくなり、あと25年ほども勤務し続けるのが本当にいいのか疑問を持つようになりました。そうした中、ある程度の資産があるということもあり、最近「FIRE」という単語も知りました。さすがにこの歳で全く働かないという選択肢はありませんが、年収半分ぐらいでもう少し気楽に働ける仕事への転職もありかなと思っています。

すでに30代後半であることもあり、現職が公務員なので転職先も限られるかもしれませんが、合格率10%程度の国家資格等を3つほど保有しているので一定の能力も提示できると考えています。

妻にもそれとなく話しているのですが、ありがたいことにある程度理解してもらい、妻はそのまま働き続け、私は転職という選択肢を持ち続けられています。

こうした中、2点伺いたいことがあります。

1.老後を見据えた望ましい資産配分

転職するか否かは別にして、最適なアセットアロケーション(※編集部注 資産配分)はどのような内容かをアドバイスいただければと思います。定期預金や社債など比較的ローリスク・ローリターンを中心にしていますが、20年程度の期間での運用を考えるともう少しリターンが高い商品なども考えるほうが良いかとも思っています。

2.転職時にキープすべき年収などの条件

より負担が少ない職への転職を考えていますが、どの程度の年収は確保し続けたほうが良いでしょうか? 最低限、厚生年金に加入できる職とは考えていますが、どの程度の年収を確保すべきかイメージが付いていません。妻の収入がある一方、子ども二人の学費などを考えてどの程度の収入を確保すると安心かアドバイスいただければと思います。

なお、ここでの質問とは趣旨が違ってくるとおもいますが、転職時期についても悩んでいます。今退職すると400万程度の退職金ですが、更に職責が大きくなる直前の10年後であれば1,200万程度までになりそうです。転職のしやすさ・転職後の収入と退職金のバランスで、なにかアドバイスをいただければ幸いです。

以上、よろしくお願いいたします。

・男性、36歳、公務員、既婚

・同居家族について:配偶者(39歳)、会社員、子ども2人(6歳、4歳)

・その他の家族について:現状では両者両親4名とも健在で介護の心配は今のところなし(車で1時間ほどの距離で別居。一定の資産は持っている模様)。

・住居の形態:持ち家(戸建て・岐阜県)

・毎月の世帯の手取り金額:63万円(私38万円、妻25万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:145万円

・毎月の世帯の支出の目安:41万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:10万4,000円(ローン返済)

・食費:8万4,000円(ドラッグストアを多用しているので、衛生消耗品など含む)

・水道光熱費:1万4,000円

・教育費:1万3,000円

・保険料:8万5,000円(終身保険短期払、残り5年)

・通信費:8,000円

・車両費:1万8,000円

・お小遣い:特に定額での支給なし

・その他:8万4,000円(衣類、旅行年40万、家具家電、固都税など)

・毎月の貯蓄額: 収入残高を貯蓄・投資へ

・ボーナスからの年間貯蓄額:0円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,580万円

・現在の投資総額:2,510万円→内社債1,100万(5年以内に満期)、内投資信託510万(NISA始めインデックスファンド)、内iDeCo50万(積立額)、内終身保険返戻金850万円

・現在の負債総額:住宅ローン残債3,820万円(物件購入額5,000万円、借入額4,500万円、金利0.407%、返済期間35年)

・老後資金:夫婦ともに20歳以上各種年金に加入、退職金R4.3退職で400万円、10年後で1,250万円


伊藤:ファイナンシャル・プランナーの伊藤亮太です。

まず、いろいろとお話をする前に、私も同郷ですのでお答えしたいと思うのですが、長期的に見て岐阜県は人口減少で大変な状況となると思います。そのため、公務員で継続して働く選択肢もあってよいのではないか(部署変更などによる仕事軽減の検討もあり)と思います。住宅ローンも残っていますし、お子さまも小さいので、今のまま継続という選択肢もあってよいかなと。

ただし、仕事が激務であり、できる限り安らぎを得られるような働き方に変更したいのであればそれもあってはよいと思うものの、果たして将来有望な産業はあるのかどうか? また、資格を活かしていろいろチャレンジするだけの営業力などお持ちかどうか、念のためご確認ください。隣の芝生は青く見えるかもしれません。しかしながら、さらに激務になる恐れもありますし、「こんなはずじゃなかった」とならないように選択肢をしぼっていく必要があります。

そのうえで、回答させていただきます。

老後を見据えた望ましい資産配分は?

定期預金や社債などかなり安定的な運用となっており、これはこれで立派な資産運用だと思います。ただ、もう少し増やしたいというお気持ちがあるのであれば、今の資産状況から見て若干ですが、冒険してもよいかなと思います。

その際の資産配分ですが、インデックスファンドによる株式投資の比率を運用資金額の半分程度まで上げてみてはいかがでしょうか。例えば、1,000万円は株式関連で運用する。安定運用を6割とし、積極運用を4割とすることで、ある程度リターンを得られるように配分を変更します。とはいえ、日経平均もニューヨークダウもかなり上昇していますので、すぐにまとめて投資するというのではなく、つみたてNISAやiDeCoなどをうまく活用し、ドルコスト平均法を活かしながらコツコツと、が向いているのではないかなと思います。

なお、その際に、eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)などでの運用を検討されてはいかがかなと思います。全世界を投資対象とすることで、世界の経済成長の恩恵を受けられるようにし、20年程度運用してはいかがかなと思います。

転職時にキープすべき年収などの条件は?

奥様が働いているのが強みになります。そのため、現状の世帯支出や今後の教育資金確保、ならびに住宅ローンの返済を考慮すると、手取り月々30万円程度の収入は欲しいですね。ボーナスも含めて年450~500万円ぐらいの収入が維持できれば、なんとかなると思います。残業時間がないなど、ご自身にとって希望通りのよい条件があればよいですが……。

例えば、副業のような形で、半分独立、半分会社員といったスタイルなどもよいかもしれません。条件に合う仕事がないか日頃から探ってみましょう。すぐではなくてもよいと思います。私の個人的な意見ですが、私ならあと10年頑張って貯めた資金(退職金も含む)をもとに、住宅ローン控除がなくなる段階でまとめて返済し、負担軽減を考えます。そして、残った資金を運用しつつ、好きな仕事をするように考えます。週3日程度は会社員、あとは自営業のような仕事をするのもよいと思います。もちろん、会社員として働きながら負債のない、着実な生活を歩んでいくのもよいと思います。

環境の変化も考慮しつつ、コツコツと

今考えるのと、数年後に考えるのでは環境も変わってくるため、あくまで現時点におけるアドバイスです。無理にとは言いませんが、まずは公務員の職を全うしつつ、ある程度資金を蓄え、退職金を受け取ることを考えながら、コツコツ運用をはかることを検討されてみてはいかがでしょうか。

そして、お子さまの教育を重視して、様々な選択肢を設け、楽しく明るいご家庭を築くことができるとよいのではないかと思います。

© 株式会社マネーフォワード