「今日食べたものは3か月後の体に」専門家が語るジュニア世代に必要な“成長メシ”

公認スポーツ栄養士の酒井美緒さん【写真:本人提供】

公認スポーツ栄養士の酒井美緒さんによるジュニア世代の食事講座:連載第1回

公認スポーツ栄養士の酒井美緒さんは女子野球をはじめ、サッカーやラグビーの選手を食事の面からサポートしてきた。選手の体づくりやパフォーマンスアップ、怪我の予防につながる食事は成長期の小、中、高校生にとっても重要で、体ができ上がっている社会人やプロのアスリートとは違う意識も必要になる。ジュニア世代の食事や栄養について、様々な人の考え方を伺う連載「成長メシのすすめ」。第1回は公認スポーツ栄養士の酒井美緒さんに食事が持つ意味や大切さを聞いた。

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はじめまして。公認スポーツ栄養士の酒井美緒と申します。これまで食事を通してアスリートをサポートしてきた経験から、ジュニア世代の方たちの体づくりやパフォーマンスの向上につながるお話ができたらと思っています。

まずは、私の経歴を簡単にお話します。公認スポーツ栄養士を目指すようになったのは高校生の頃です。当時、私は通学で甲子園球場の近くを通っていました。春と夏になると、多くの高校野球ファンや野球少年が集まってお祭りのような雰囲気になるのも好きで、よく高校野球を観戦していました。漠然と高校野球、スポーツと関わる仕事がしたいなと思っていました。

その頃、高校野球の記事を新聞や雑誌で読んでいたのですが、ある新聞記事が目に留まりました。それは高校野球を指導しているスポーツ栄養士に関するもので、栄養指導をしているチームと、何もしていないチームとでは筋肉量の付き方に差があったという内容でした。食事がパフォーマンスアップにつながり、球児の体を支えるために大事だと知って、この仕事をしたいと思うようになりました。

大学は食事について学べる食物栄養学科に進み、卒業後に食品メーカーに就職しました。この会社は、女子プロ野球の球団を運営していました。入社から数年経って、私はある女子野球チームの球団管理栄養士を任されました。選手の日々の食事を把握して、パフォーマンスを向上させたり、選手生命を長くしたりするサポートをしました。

ジュニア世代は「年齢や成長に合った食事をすることが大事」

現在は、株式会社スポーツフィールドという会社で女子ラグビーチームや大学のラグビーチーム、ドイツのプロリーグでプレーする女子サッカー選手をサポートしています。女子サッカー選手のサポートでは、無理のない範囲で食事の写真を送ってもらっています。その他に、体重、体脂肪率や水分量、1日の運動量、排便の有無や起床・就寝時間などの項目を把握し、栄養や食事のアドバイスをしています。

アスリートにとって、食事は競技力に影響する重要な要素だと思っています。今はSNSなどで様々な食の情報を得る事ができます。ただ、ジュニア世代は、体ができ上っているアスリートの食事をまねするよりも、年齢、成長に合った食事をする方が大事です。食事は体の土台づくりやパフォーマンスアップ、怪我の防止につながります。

食事に意識を持って自分にできることを続けていくと体が変わっていくので、小さい時から体づくりのために食事に意識を持つことはすごく大切です。「あす試合だから」「来月試合だから」と食事の必要性を感じた時に慌てて力を入れても急激には変わりません。食事は日々の積み重ねで、「きょう食べたものは3か月後の自分の体になる」と考えてください。競技で活躍したいイメージを持って、楽しみながら食事するのが大事です。

怪我で引退することなく、好きなスポーツを続けたいと思うのであれば、小、中学生から食事を意識することで活躍できる可能性が広がるはずです。どんなものを食べればいいかなど、具体的なお話は次回以降にしていきます。

○プロフィール
酒井美緒(さかい・みお)管理栄養士/公認スポーツ栄養士。兵庫県尼崎市出身。2012年国家試験合格。女子野球チームの球団管理栄養士を担当。2016年株式会社スポーツフィールドに入社。2018年日本スポーツ協会と日本栄養士会共同認定である公認スポーツ栄養士を取得。アスリートのキャリア支援を行いながら、個人、チーム、保護者問わずアスリートの栄養サポートを業務に従事。大学の授業や行政機関のイベントにも数多くの登壇実績を持つ。Twitter:https://twitter.com/923_mio(記事提供:First-Pitch編集部)

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