ホントの意味の分散投資とは?投資信託の中身も分析!データに基づいた戦略を

今月に入り株式市場が好調です。TOPIX(東証株価指数)はバブル期の1990年8月21日以来の高値を更新し、日経平均株価も3万円の節目を突破しました。そのせいか、再び資産運用の相談をされることが増えています。投資を始める前に書籍を読んだり、ネットで調べたりしている人も多く、未経験者にも関わらず非常に詳しい方も多いのですが、意外とデータを見ていないことに気付きました。今回はデータの重要性を改めて共有します。


長期投資の基本をおさらい

それなりに貯金もあるし、銀行に預けていても仕方ないから資産運用をしたい。だけど、仕事も忙しいし、家族との時間や趣味の時間も大事にしたい。このような気持ちで資産運用を始めようとする人たちには、つみたてNISAやiDeCoといった非課税制度を使いながら、投資信託への長期投資を勧めています。長期投資の基本として挙げられるのが「長期、つみたて、分散」ということは、既に多くの方にも浸透してきましたので、ここでは説明を省きます。

どの投資信託がいいか、という話では、「投資する資産は株式だけでいいが、投資する地域は分散したい」とのことだったので、世界株式や米国株式に投資をする投資信託を提案しました。つみたてNISAでも世界株式や米国株式に投資する投資信託は8~10本ずつ取り扱われています。

すると、世界株式は分かるけど、米国株式に投資する投資信託はあまり分散できないのではないか、と質問を受けました。たしかに、米国株式と聞くと地域的な分散が出来ていないように思うかもしれませんが、実際にはどうなのでしょうか。データを確認したいと思います。

世界に投資ってどういうこと?

まず、世界株式に投資する投資信託は世界中に満遍なく分散投資している印象を持っていたようですが、実際にデータを確認したかを尋ねたところ、データは見ていないとのこと。

世界株式に投資する投資信託といっても、闇雲に、または名前から連想されるように全ての株式に満遍なく投資をしているわけではありません。たとえば、つみたてNISAに採用されている世界株式はMSCI ACWIという株価指数に連動するように運用されます。聞いたことがないかもしれませんが、MSCIはモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルという指数を算出している企業の略称で、ACWIはAll Country World Indexの略で、世界中の株式に投資できる株価指数ということです。

このMSCI ACWIは23の先進国と27の新興国から約2,960社の株式から算出される指数で、世界中で投資可能な株式のうち85%をカバーしています。この説明だけを見ると、やはり世界中に投資をしていると思うかもしれません。しかし、国・地域別に投資先を見てみると下図のようになっています。

どのような印象を持ちますか?世界株式とはいえ、実際には米国への投資が約6割となっています。世界中の国に均等に満遍なく分散投資をしていると思っていた人は驚いたかもしれません。

米国企業はグローバル企業

では、つぎに米国株式投資が本当に米国一国への投資なのかもデータで見てみましょう。さきほどはACWIの投資先を国・地域別の比率で確認しましたが、今度は投資比率で上位に来る企業を見てみましょう。2021年8月時点ではアップル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック、アルファベットと米国株が上位を独占しています。

ここで、アップル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックがどこで売上をたてているのかをグラフで見てみましょう。それぞれ2020年度のデータになります。

どうでしょう。米国を代表する企業ですが、どの企業も米国では半分程度しか国内で稼いでいないことが分かるでしょう。データを見る前と後とでは印象が全く違いませんか。世界株式とつく投資信託でも、実際は半分以上は米国企業に投資されている。しかし、その米国企業は売上の半分近くは米国以外で稼いでいるということです。

とにかくデータの裏付けを

今回挙げた2つの例は投資の世界で誤解されがちなことの一部にすぎません。これは未経験者だから誤解していたというよりも、データを確認する習慣がない人によく起こっている現象だと思います。投資歴が長かったとしても、またはメディアに出ているような専門家であったとしても、意外とこのようにデータとは異なる情報を発信する人をよくみかけます。

それっぽいことを語られると信じ込んでしまうものですが、印象論ほど恐ろしいものはありません。投資をするということは、自分の大事なお金を失うリスクを取るわけですから、しっかりとデータを確認する習慣は身につけましょう。

その際、SNSやブログなどの二次情報を参照するのも危険です。しっかりと一次情報を確認するようにしましょう。ネット社会になり、国も企業も多くの情報をネット上に開示してくれています。エクセルでそのままダウンロードできるものは自分で分析をそのまま進められますし、PDFやウェブページしか用意されていなかったとしても、数字を手打ちすればいいだけです。面倒かもしれませんが、投資でお金を増やそうと思うならば、これぐらいの手間はかけたほうが良いと思います。

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