デジタル庁創設で私たちの生活が変わる?民間需要の拡大が見込める3つの政策を解説

昨年、新型コロナウイルス感染者数報告の一部でFAXが使われていたことが判明し、日本のデジタル化の遅れが顕在化しました。一方で、テレワークの推進、動画コンテンツの拡充、ビッグデータの活用など、この1年でデータの多様化・大容量化が進んでいます。

日本のデジタル化対応は喫緊の課題として、デジタル社会の司令塔を担うデジタル庁が9月1日に創設されました。また、10月10日・11日を「2021年デジタルの日」と定め、官民で連携してデジタル関連の技術・サービスを利用した祝祭が実施される予定となっています。

<写真:デジタル庁所在地の東京ガーデンテラス紀尾井町/PIXTA>


デジタル庁はデジタル社会の司令塔

デジタル庁が創設されましたが、すぐさまデジタル化ができるわけではありません。各省庁などに分散されていた権限等をデジタル庁が統括し、速やかな整備がなされていくことになります。

デジタル庁の創設後、デジタル社会形成基本法に基づく「新重点計画」が作成される予定ですので、中身に注目したいところです。「誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化を。」の理念のもとに、行政のデジタル化が推進されていくことになるでしょう。

8月24日に出されたデジタル庁として初となる2022年度予算の概算要求額は5,426億円。このうち98%の5,303億円が情報システムの整備・運用経費となるようです。また、マイナンバーの利便性向上などには経費として10億円あまりを盛り込んでいます。

岩井コスモ証券では、政府が掲げるデジタル革命の中でも今後の需要が見込まれる(1)ガバメントクラウド、(2)国・地方における行政のデジタル化、(3)マイナンバーカードの利活用促進、以上の3点に注目しました。

ガバメントクラウドとは?

ガバメントクラウドとは、クラウド・バイ・デフォルト原則の下、情報システムを自治体ごとに管理・運用していく従来の方法から脱却し、クラウドサービスを利用した基幹業務つまり行政サービスの提供を行う計画で、行政サービスの100%デジタル化を目指すものです。

先行事業が開始されており国内勢では、日立製作所(6501.東1)、NEC(6701.東1)、富士通(6702.東1)、KDDI(9433.東1)、NTTデータ(9613.東1)などがセキュリティ評価制度であるISMAPの基準を満たすクラウドサービスリストに登録されています。クラウド事業者が決まっていないことから、採用された企業は注目を浴びることになるでしょう。

自治体業務システムの標準化・共通化とは?

国・地方におけるデジタル化では、クラウド環境への移行に向けて自治体業務システムの標準化・共通化に向けた取組みを続けています。2022年夏ごろに基幹業務における標準仕様の策定が終わり、本格移行期は2023年度以降となる予定です。2025年度までにガバメントクラウド上に基幹業務システムを移行することを目指しています。

基幹業務システム分野では、競争環境を確保してベンダーロックインによる弊害を回避する方針で、一部の企業だけでなく多くの企業にチャンスが広がることに期待ができるでしょう。要件等が判明すれば受注活動が活発となり、2025年度に向けて需要が拡大していくこととなるでしょう。

マイナンバーカードの利活用促進とは?

マイナンバー制度は、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平・公正な社会を実現するための社会基盤として導入されました。行政のデジタル化において重要な役割を持つことから普及が促進されています。8月1日時点では、交付枚数は4,563万枚(人口に対する交付枚数率は36.0%)と国民の3人に1人以上がマイナンバーカードを持つ状況です。

マイナンバーは、公共分野では社会保障・税・災害の3分野への情報連携だけでなく、健康保険証、運転免許証、お薬手帳、国家資格の証明などでの利用が予定されています。また、民間事業者でもマイナンバーカードの利活用が進む見込みです。

ICチップには、公的個人認証サービスに使用される電子証明書の他に空き領域があり、ここにマイナンバーカードアプリケーション(以下、カードAP)が搭載されています。このカードAPは、民間事業者も利用することが可能です。マイナンバーカードにアプリをダウンロードすることで各種用途に用いることができる仕組みとなります。

例えば、企業の出退勤管理、施設・会議室への入退出管理、PCログインにおける認証、施設利用のための電子チケット、診察券としての利用など様々なサービスへと利活用することができます。

将来的には財布に入っているカード類の大部分がマイナンバーカード1枚にて利用していくことが可能となる見通しです。マイナンバーカードを使った、多くの人が利用するようなサービスを提供する企業も出てくると見ており、今後注目していきたいと考えます。

<文:投資調査部 饗場大介>

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