雲仙土砂災害から1カ月 「燗つけ場」復旧模索 八万除き地獄巡り再開

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土砂災害から1カ月。八万地獄を除く区域では地獄巡りや温泉卵の販売も再開した=雲仙市小浜町、お糸地獄

 雲仙温泉街(長崎県雲仙市)を襲った土砂崩れから13日で1カ月。土砂に埋もれた「八万地獄」では今も、地獄の湯気で水道水などを温めて旅館やホテルへ送る施設「燗(かん)つけ場(ば)」の復旧の見通しが立っていない。国や市などが対応を模索している。
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 七つの地獄で構成する雲仙地獄。土砂災害から1カ月が過ぎ、八万地獄を除くほとんどの区域で遊歩道が復旧、地獄巡りや温泉卵の販売も再開した。一方、雲仙温泉観光協会によると、8月31日までに宿泊施設12軒で計5243件(1万7458人)の予約キャンセルがあり、4軒が13日現在も休館している。
 八万地獄では、旅館やホテルに温泉を供給する源泉や配管設備は仮復旧したものの、6施設ある燗つけ場や導管は土砂に埋もれ使用不能の状態となっている。

雲仙地獄の燗つけのイメージ

 燗つけは、宿泊施設と地獄とを結んだ導管に水道水や湧き水を送り、地獄の熱で温水にして戻す仕組み。各施設が地獄の噴気孔に「燗つけ場」を設置し、導管をらせん状にはわせて効率よく温めている。いわば、燃料費がいらない「天然のボイラー」だ。
 雲仙スカイホテルも今回の災害で供給がストップ。内田貴志専務(44)によると、雲仙地獄周辺は硫黄成分などの影響で電化製品の寿命が短い。エアコンやテレビを頻繁に更新せねばならずコストがかさむ一方、燗つけの恩恵でボイラー燃料費はかからない。
 内田専務は「燗つけは、雲仙(温泉街)の人たちが自然と共生していることを象徴するエコな仕組み。早く復旧させてPRしたい」と待ち望む。
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 地獄を所管する環境省と市、旅館関係者が現在復旧について協議している。部分的に土砂を撤去し、1カ所でも早期復旧させ各施設で共有するか、あるいは、別の地獄の噴気孔を利用するかの2案を軸に検討。この場合、蒸気の量や各宿泊施設までの距離などを考慮し場所を決める。
 環境省雲仙自然保護官事務所の服部恭也上席自然保護官は「雲仙を世界に通用する国立公園にするために、八万地獄の復元に留まらず地獄の全体像を見据えながら、燗つけの在り方、見せ方の検討を進めている」と話す。
 雲仙の土砂災害では、小地獄地区で住宅2棟が押し流され、4人が死傷。約1キロ離れた八万地獄でも土砂崩れが起きた。周辺の山中では複数の亀裂が見つかっており、県が変化がないか観測を続けながら治山対策を検討している

雲仙地獄にある燗つけ場。導管の中を流れる水を蒸気で温めている=雲仙市小浜町(雲仙福田屋提供)