妻39歳、夫44歳で34年の住宅ローンを組む予定。老後資金と教育費は大丈夫?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、39歳・パートの女性。夫は44歳会社員。「やや無謀」と感じながらも、これから34年の住宅ローンを組む予定だと言います。完済時、夫は78歳。老後資金や教育資金は大丈夫でしょうか? FPの秋山芳生氏がお答えします。

やや無謀ながら中古物件の購入を控えています。

39歳パートで手取り収入は月15万ほど、夫は44歳、手取り月収30万円ほど。昇級・ボーナス・退職金はほぼありません。

現在は家賃が安いため、自分のパート収入をほぼ貯蓄・積立にまわせていますが、今後ローンの支払いが始まると、家計がどうなるのか、子どもの教育費、自分達の老後など不安です。どのように対策していけば良いかアドバイスお願いします。

●ローンの想定は以下の通りの条件です。

・借入額2,400万円、34年払い、変動0.7%、固定資産税年間10万円程度

・親から200万円援助予定(今後)

●その他の条件は以下の通りです。

・子どもは高校まで公立。大学は私学文系で想定。それ以上は奨学金もやむなし。

・手当は全額貯蓄。ジュニアNISA現60万。余裕がある時に追加している。

・投資内容は夫iDeCo2万円、妻iDeCo1万円、つみたてNISA2万円、共に3年目

・趣味娯楽は毎月使わない分は置いておいて年1〜2回の旅行代に。その他も使わない分は置いておいて、不定期にかかる冠婚葬祭、交際費、家具家電の購入費用にあてている。

・夫婦とも体の許すかぎりアルバイト等で働くつもり(最低でも各々5〜10万円程度の収入を得られる程度)

【相談者プロフィール】

・女性、39歳、パート、既婚

・同居家族について:

夫(44歳)/月手取り30万円程度、昇給・ボーナス・退職金ほぼなし、定年65歳。その後も条件は変わるが労働は可能。年金予想額は月10万円程度?

私(39歳)/月手取り15万円程度、昇給・ボーナス・退職金なし、定年65歳。年金予想額は月6万円程度。

子ども2人/1歳、6歳

・住居の形態:賃貸(大阪府)

・毎月の世帯の手取り金額:45万円

・ボーナスの有無:なし

・毎月の世帯の支出の目安:約30万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:4万5,000円

・食費:6万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:2万円

・保険料:1万4,000円

・通信費:1万6,000円 (スマホ2台+ネット)

・車両費:3万円

・その他:3万円(日用品1万円、医療費5,000円)

・趣味娯楽:2万5,000円

・その他:3万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):450万円

・現在の投資総額:200万円

・現在の負債総額:2,400万円


秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼FP YouTuberの秋山芳生です。2,400万円の住宅ローンを組んで中古マンションの購入を控えており、今後の住宅ローンの支払が問題ないかを確認希望されています。

現在、夫44歳、妻39歳なので、34年の住宅ローン完済時はご主人は78歳になります。また、6歳のお子さんの教育費も不安が残るとのことです。住宅費、教育費、老後費用は、「人生の3大支出」といわれ、人生の中でも大きな支出になります。まずは現在の収入と支出を見直して、住宅ローンの返済、教育費の資産形成が成り立つかを一緒に考えていきたいと思います。

家賃の他にも修繕費などの住宅関連費用の増加に注意

現在の家計は、45万円/月の手取り収入に対して、30万円/月の支出。ただし、貯蓄は10万円/月とのことなので、使途不明や年間の特別費が平均すると5万/月あるものとします。

今後、賃貸から住宅ローンに切り替わると毎月の住宅費は4.5万円から6.64万円に上がります(ご両親からの200万円の住宅購入援助があった場合は、返済期間を短くすることで調整)。また、固定資産税が毎年10万円かかることや、修繕費や火災保険を考えると、年間で24万円ほど住宅関連費用がかかります。修繕費は毎月かかるものではありませんが、毎月1万円ほどを5年、10年と家の修繕用に貯めておき、必要なタイミングで使うと考えておきましょう。

また、築30〜50年も経てば水回り(台所、お風呂)やフローリングなどの大型改修なども考える必要がでてきます。購入する中古物件のコンディションにもよりますが、将来的に発生する費用として想定しておきましょう。

保険料の見直しは要検討

保険料1万4,000円/月ですが、見直しをすれば保険料を下げられる可能性があります。医療保険に入っている場合は、預貯金が450万円以上あるため不要です。高額療養費もあり、医療費にかかる上限は限定されています。医療にかかる費用が将来にわたり心配であれば、保険料分を貯蓄や投資に回し備えると良いでしょう。ただし、毎月5,000円の医療費がかかっているので何か持病をお持ちなのかもしれません。持病がある場合、病気の内容により解約をおすすめしない場合もあります。

死亡保険への加入はおすすめ

お子さんが1人いらっしゃるので、収入の大黒柱であるご主人に万が一のことがあった場合に、遺族の生活を保障する掛け捨ての死亡保険への加入をおすすめします。死亡保険は定期定額型(例えば20年間・2,000万円の保険金など、一定期間、一定額の保険金が保障されるもの)ではなく、給料のように毎月一定額の保険金が支払われる収入保障保険(お子さんが自立する年齢まで、毎月10万円の保険料など)のほうが効率的でしょう。医療保険を解約して、収入保障保険に切り替えできれば、月に8,000円以上収支改善が期待できます。

通信費も見直せる余地があり

現在、スマートフォン2台とインターネット回線で1万6,000円/月に発生していますが、仮にインターネット回線を6,000円/月とするとスマートフォン代が5,000円×2台と考えられます。お住まいの地域の電波状況にもよりますが、より安い格安スマホなどに乗り換えやインターネット回線の見直しで、月に5,000円以上費用を圧縮できるでしょう。

住宅を購入した後の家計はどうなる?

それでは、住宅購入をした場合のライフプランシミュレーションを行っていきたいと思います。

【条件】
・収入は55歳まで0.5%上昇し、その後60歳まで現状の収入をキープ、61〜65歳は7掛け、66〜70歳は夫10万円/月、妻5万円/月とする。
・年金は現在の年金支給状況の8掛けとして計算。
・介護費用は80歳以降20年にかけて発生。一人あたり500万円とする。
・65歳以降の生活費は、現役時の7掛けとする。
・保険は医療保険終身8,000円(2名分)/月、死亡保険6,000円(65歳まで)/月として記載。
・資産運用は、運用資金を3%で複利運用し、65歳以降は1.5%で運用される。
・お子さんは、小学校から高校まで公立、大学は私立文系。
・受験費用は高校受験、大学受験で受験年に加算。
・住宅ローン控除が10年間受けられる。
・お子さんが30歳で結婚しお祝い金を送る。
・車は7年に1度買い換え100万円が発生。70歳で車を手放す。
・インフレ率は0.75%とし、生活費が増える。
・大型修繕(水回り・空調・床など)が20年後、35年後に300万円発生する。

このままだと夫が81歳で資産がショート!?

先程の、改善ポイントを反映する前のライフプランシミュレーションでは、ご主人が81歳で資産がショートしてしまう結果になりました。

家計改善後はどうなる?

保険料、通信費を改善すると1万3,000円/月に改善になります。さらに、光熱費、食費、趣味娯楽、自動車、その他から1万7,000円改善し、合計3万円収支を改善し、そのうち2万円を資産運用に回すと、次のように変化します。

支出の中で大きな割合を締めているのは、自動車なので自動車保険の見直し(車両保険を外すなど)を行うと大きな改善になるでしょう。

家計改善をしっかりと行えれば、住宅ローン返済は可能ですが、かなり厳しい道程になると思われます。しっかりと家計把握をするととともに、固定費を中心に徹底的な家計管理が必要です。

ローンを組む際に押さえておきたいこと

住宅購入時に両親よりの200万円の援助はシミュレーションに組み込んでいないので、援助が受けられる場合は住宅ローンの返済期間を短くすると良いでしょう。

住宅ローンは、変動金利0.7%の想定ですが、金利が上昇することも考えられます。金利上昇した場合には、住宅ローンの支払いが今よりも厳しくなっていくので、更に厳しく家計管理をする必要があります。住宅ローンは、物件を手にする瞬間に発生しますが、逆に言えば家を買う直前までどの金融機関の住宅ローンを借りるのか選択できます(審査などがあるため、事前に金融機関に確認しましょう)。住宅ローン金利は最安0.4%を切っているところもあるため、複数の金融機関を比べると良いでしょう。

また、住宅ローンは他のローンと比べると圧倒的に金利が安いので、無理な繰り上げ返済はしなくて良いでしょう。78歳まで支払う計画になっていますが、団体信用生命保険に入っているため、年齢が上がって死亡リスクが高い時に無理な返済をするともったいない場合があります。ただし、金利が大きく上昇した場合は繰り上げ返済をおすすめします。

投資をうまく活用すればインフレ対策に

最後に、現役時代の投資による複利利回りを3%から5%に増やすことができた場合、シミュレーション結果はこのようなります。

インフレや金利上昇は経済が好調であると比較的起こりやすくなります。その場合に、株式市場も上がりやすくなる傾向があるため、変動金利で住宅ローンを借りている場合はインデックス型株式の投資信託を持つなどすると、一つのリスクヘッジになる可能生もあります。

家に縛られすぎない柔軟な選択を

住宅購入は人生の中で非常に大きな選択になります。長期間住宅ローン返済が続くので、支払いが滞らないように、ほかの費目も含めた家計改善が重要になります。また、一度買った家に一生住まないといけない訳ではないので、リセールバリューなども計算しながら、できるだけ家に縛られないような考え方や知識を持つことが重要です。借入や変動金利については、資産形成の勉強も行うと全体的なバランスが取りやすくなりますので、日々学んでいきましょう。

以上、どこか参考になれば幸いです。

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