水俣病伝えたユージンは「人間味あふれる人」 親交のアマ写真家、映画「MINAMATA」全国公開に期待

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ユージン・スミスの素顔を切り取ったプリントを自宅に並べる淵上武さん=9日、水俣

 水俣病を世界に伝えた写真家の故ユージン・スミスを描いた映画「MINAMATA-ミナマタ-」が、23日から全国公開される。ユージンと親交のあった熊本県水俣市のアマチュア写真家淵上武[たける]さん(79)は、「人間味あふれる人だった。彼の写真への情熱、温かいまなざしが伝わる絶好の機会」と期待を寄せる。

 米国生まれのユージン(1918~78年)は太平洋戦争の従軍カメラマンなどを経て71~74年、同市に滞在。患者やその家族の営み、裁判闘争などを撮影し、元妻のアイリーン・美緒子・スミスさんと共著で75年、写真集「MINAMATA」を出版した。

 当時、チッソ水俣工場の第一組合員で写真が趣味だった淵上さんは、著名な写真家に会ってみたいと自宅を訪ねた。写真誌「ライフ」でも活躍したユージンは先生といった存在。しかし「先生と呼ぶなら明日から来るな。ジーンでいい」と一喝された。偉ぶらない人柄にひかれ、以来頻繁に自宅に通い、写真のアドバイスも受けた。

 友人としての付き合いが始まって間もないころ、淵上さんが胎児性患者の話をすると、ユージンがぼろぼろと涙を流した。「決して上から目線ではなく、相手を思いやる気持ちにあふれていた」

淵上武さんが「特に印象深い」というユージン・スミスを撮影した2枚の写真。左はアイリーンさんとのツーショット、右は小学生との談笑風景

 風景写真中心だった淵上さんは、次第にユージンの「素顔」にレンズを向けるようになった。工場前で患者の座り込みを撮影する姿、大好きなウイスキーを飲みリラックスした表情、愛猫を抱いてのうたた寝…。約30枚のプリントを今でも大切に保管する。

 特に印象深い写真は2枚。1枚は工場の裏山で撮影したアイリーンさんとのツーショットで、超望遠レンズを持つ凜[りん]とした立ち姿。もう1枚は、長身の膝を折り小学生と話す柔和な表情。「ジーンの心[しん]の強さと優しさがにじむ」という。

 18日にある同市での先行上映で観賞予定の淵上さん。「水俣病とカメラ一つで向き合った彼の真摯[しんし]な姿が、多くの人たちの共感を呼ぶことを願っている。思い出をかみしめながら見たい」と話した。(小野宏明)

 ◇「MINAMATA-ミナマタ-」は米俳優ジョニー・デップがユージン役で主演。23日から熊本ピカデリー、TOHOシネマズ熊本サクラマチ・はません・宇城・光の森、ユナイテッド・シネマ熊本で公開される。

米国の写真家ユージン・スミスをジョニー・デップさんが演じた映画「MINAMATA」の一場面(映画配給会社ロングライド提供(C)Larry Horricks)