死者情報 どこまで公表? 性別、年代、基礎疾患… 高い「遺族の意向」の壁、自治体で温度差 新型コロナ

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新型コロナウイルス感染について会見する県くらし保健福祉部の伊地知芳浩次長。会見はクラスター発生時に開いており、死者がいれば取材に応じる=鹿児島県庁

 新型コロナウイルスで亡くなった人の情報を巡り、遺族の意向や個人情報を理由に、年代や性別といった基本情報も分からないケースが鹿児島県内で相次いでいる。全国では注意喚起に重点を置き、基礎疾患や死亡に至った経緯まで公表する自治体もあり、対応は分かれる。専門家は「行政が得た情報は市民の共有財産。個人が特定されない範囲で、より具体的な情報の公開が必要」と指摘する。

 県は9日、8月以降に死亡した人のうち、2人は自宅待機中に容体が急変し、搬送先で亡くなったと明らかにした。だが、年代や容体が急変した経緯について、「個人の特定につながる」と繰り返し、公表しなかった。

■実態見えず

 県と鹿児島市は死者が出た場合、遺族の同意が得られた事例のみ年代や性別、死因を公表している。8月~9月12日に発表した19人のうち、13人は全項目が非公表。重症化リスクがあったのか、元気な人が亡くなったのか実態は見えない。

 県は、遺族の同意を公表の前提としている理由を「年代などは亡くなった人の情報。遺族の意向に反して公表するものではない」と説明。鹿児島市も「葬儀などの状況と関連づけて個人が特定される恐れもある」とする。

 県くらし保健福祉部の伊地知芳浩次長は「2、3カ月ほどの期間で県内の死者統計として示したい」と話す。

■国の基準なし

 厚生労働省は、感染者の年代や性別、居住地、発症日時に関しては「公表すべき情報」と位置付けているが、死者の情報は「感染拡大防止の観点から重要性は低い」とし、公表基準を示していない。

 九州・沖縄で、死者の年代と性別をいずれも公表するのは熊本、福岡の2県。熊本県は過去に発表した感染者の事例番号と結びつけて発表し、居住地や発症日も明らかになる。

 福岡県は「必要最低限の情報」として年代と性別を発表。最近はワクチン接種の状況について、報道機関から質問があれば原則答えているという。

 長崎県や沖縄県は「感染が広がる恐れがない死者の詳しい情報は不要」などとし、遺族の意向を前提とする。

■同年代へ啓発

 全国では、基礎疾患などを最初から発表する自治体もある。

 東京都は昨夏、遺族の同意なしでも年代や性別、基礎疾患名、死因を公表する方針に改めた。「感染防止の啓発に主眼を置いた。関心も高い」と担当者。神奈川県は「県民の行動変容につながる情報を出す」とし、発症からの経過も公表する。

 高知県は遺族に情報公開の必要性を説明した上で、同意がなくても年代や性別、死因、死亡日、基礎疾患を明らかにする。担当者は「同じ年代や持病がある人に注意を促すのに必要な情報」と語る。

 鹿児島大学の宇那木正寛教授(行政法)は「年代や基礎疾患の有無は感染予防のためにも公表が必要。行政は個人情報を守る立場にあり、その中でバランスをどう取るかの問題」と指摘。「遺族の意向を確認しなくても提供できる内容を考えるべきではないか」と話す。

表・九州・沖縄各県の公表方法