<社説>新振計の「基本方向」 沖縄の主体性を強めよ

 内閣府はこのほど、「新たな沖縄振興策の検討の基本方向」を示した。2022年度以降の新たな沖縄振興策の骨格と位置付けられ、法整備などの議論のたたき台となるものだ。子どもの貧困対策推進など、現振計の10年間で表面化した問題を解決することを主眼としている。 県の主体性を担保する上で懸案だった「一括交付金制度」は継続する方針を示したものの、政府は「有効活用に留意」とくぎを刺した。

 今後の沖縄振興の「骨子」となり、次代の道筋を示す「基本方向」だが、問題なのは策定過程で県の存在が薄かったことだ。それに加え、新振計について「国が新たな基本方針を策定し、これに基づき県が沖縄振興計画を策定する」と明記した。現振計から策定主体となった県の主体性を国が奪わないか危惧する。国は沖縄の主体性を尊重し、さらに強める姿勢であるべきだ。

 沖縄振興計画はこれまで、1972年の沖縄の施政権返還(日本復帰)以来、10年ごとに5次にわたって展開されてきた。3次計画までは沖縄振興開発計画の名称だったが、2002年度の第4次からは「開発」の文字を取り、民間主導経済を目指した特区制度などを盛り込んだ。

 12年度からスタートした現行の第5次は、計画の策定主体を国から県に移し、自由度の高い一括交付金制度の創設を打ち出した。それまで国主導で策定されてきた計画が沖縄主導に変わった画期的な転換だった。県や市町村は、それぞれの課題解決に向けた独自の施策や主体的取り組みが求められる構図に変わった。

 この流れを止めたり変えたりするべきではない。しかし今回、内閣府が示した「基本方向」は、沖縄の将来を左右する重要な指針であるにもかかわらず、その方向性について県の意見を反映させる姿勢に乏しい。

 県が策定主体である現行法が作られた12年には、県知事を交えた「沖縄政策協議会」が複数回開かれ、「県の意向」を反映しやすい環境が整っていた。しかし今回の「基本方向」を決める過程では同協議会は開かれず、玉城デニー知事が協議に参加する機会を得られないまま議論は進められた。このやり方に加え、国が計画の新たな基本方針を策定する手法は国主導に映る。

 来年は大きな節目となる復帰半世紀を迎える。復帰に際し、当時の屋良朝苗琉球政府主席は、政府に対する建議書で県民本位の経済開発を基本理念に据えた。「地域住民の総意」を計画に盛り込むことを求め、国は県が策定した計画を財政的に裏付けるための「責務を負う」とした。県民意思に基づく計画に対して「国は口を出さない」ことが大前提だとくぎを刺したのだ。

 それは今に通ずる県民の願いである。国はこの原点に立ち返るべきだ。国のさじ加減で要求額が増減する一括計上方式の再考も求めたい。

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