【MLB】今季ワーストの8失点… 苦しむダルビッシュがプレート位置をわずかに変えたワケ

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パドレス・ダルビッシュ有【写真:AP】

「なんとかしなきゃいけないというところがあったので、どうしても力みが出てきた」

■ジャイアンツ 9ー1 パドレス(日本時間14日・サンフランシスコ)

パドレスのダルビッシュ有投手は13日(日本時間14日)、敵地でのジャイアンツ戦に登板し、4回を投げて6安打8失点で今季10敗目(8勝)を喫した。初回に先頭打者弾を含む2本塁打などで5点を失うと、4回にも2被弾。自己ワーストタイの4本塁打を許す不甲斐ない投球だった。ヤンキースなどで活躍した黒田博樹氏に並ぶ日本投手単独2位となるメジャー通算80勝は次回登板以降に持ち越された。

7連勝中のジャイアンツ打線が畳み掛ける。1回裏、先頭ラステラにカウント1-2から投じた外角低めのカッターを中越えに運ばれると、1死から四球後に適時三塁打、さらに四球で走者をため、6番ロンゴリアにも甘く入ったカッターを捉えられた。左越え3ランとなり、一挙5点を失った。

試合後、乱調の原因を探る矢継ぎ早の問い掛けに淡々と返したダルビッシュ。不甲斐ない投球は、気負いと関係していた。

「チームは(3連敗中で)負けてますし、なんとか勝たないといけない、スネルも昨日、怪我があった。長いイニングをいかなきゃいけない、なんとかしなきゃいけないというところがあったので、どうしても力みが出てきたっていうのはありますね」

力みから体の開きが早くなり、打者には腕の出どころが分かりやすく粘られ、決めにいった一投が甘くなる。この悪循環をプレーオフ進出を一番乗りで決めたジャイアンツの強力打線に付け込まれた。

4回にプレートの踏む位置を三塁側へと移した意図とは…

「真っ直ぐとか全体的なコントロールがけっこう散らばってる中で、向こうがその球をちゃんとファウルにして、甘い球を待ってたという感じでした」

本来のバランスとタイミングを掴めない投球は、2019年のカブス時代の同カードに並ぶ自己ワーストタイの4被弾につながり、うち2発はいずれも甘く入る8球目の速球だった。ただ、打ち込まれる中で、光を見いだそうとするダルビッシュらしい取り組みがあった。

4回、7番ヤストレムスキーを左打席に迎え、ダルビッシュの右足に変化が見て取れた。プレートの踏み位置を三塁側へと移した。これまでずっとプレートのほぼ中央に置かれていた軸足のつま先が、長さ約61センチのプレートの右端と並んだ。その意図を聞くと、こう返ってきた。

「昔はずっとサード側から投げていたので、1回ちょっとそっちから投げたらどうなんだろうと、投げてみたんです。やっぱりあそこから投げると、左のインコースのツーシームが投げづらく感じるし、スライダーのバックドアは引っ掛けた感じでも(いい所に)行くんですけど。対左にはちょっとやりづらいかなという感じがあったのでそこでやめました」

初回に5点を失ったものの、なんとか踏みとどまるための模索をヤストレムスキーで試みたが、結果は3本目の本塁打となった。

ダルビッシュは続けた。

「(マウンドからの)見た目も変わるのでちょっと(踏み位置が)ズレるだけで。それによって何かいい感覚が出てきたりするかなと思ったんですけど。対右に対してはすごく効果はあると思いますけど。左はちょっと嫌だなという感じがしますね……」

9年前にも見たダルビッシュが踏み位置を変える取り組み

先の“ダルビッシュらしい取り組み”とは――。それは、メジャーデビューの9年前にさかのぼる。4月9日のマリナーズ戦で、プレートの踏み位置を日本時代からの三塁側からキャンプで変えた一塁寄りで投げていたが、途中から平然と真ん中へと移した。当時、多くの投手が成功への鍵としていたツーシームの効力を上げるため、ダルビッシュも踏み位置を変えていたが、緊張と力み、そしてマウンドの固さなども影響してか、体は開き気味となっていた。

それを、デビュー戦で、しかも、途中で足場を変えたのである。ある評論家は「なかなかできることではないですよ」と首を振った。アーリントンの記者席から見た勇気ある右足の修正は、この日のヤストレムスキーへの8球とピタリと重なった。

プレーオフ争いにとどまるチームになんとか勝機を残そうとする足場の移行は、短絡的に試行錯誤の言葉では括れまい。その真情をおもんぱかれば、「肯定的なもがき」として目に映った。

「自分自身に関してはすごいフラストレーションを持っている。切り替えてまた明日いくしかないかなと思います。野球ができるベストの体を毎日つくっていくことが大事かなと思います」

チームは4連敗で首位ジャイアンツと19.5ゲーム差、2位ドジャースと17ゲーム差と離された。プレーオフ争いはワイルドカード2チーム目圏内のレッズを0.5ゲーム差で追う厳しい戦いを強いられている。

昨季の最多賞右腕は、メジャー10年目のシーズンをどうフィニッシュするか。その気概を示す公式戦の残り登板予定は、あと3つ。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)