校内学習塾の利用大幅増 串本古座高、専任置いて環境充実

酒井豊塾頭のアドバイスを受けながら自習に励む串本古座高校の生徒(和歌山県串本町串本で)

 和歌山県串本町串本、串本古座高校(左近晴久校長、229人)の魅力づくりを支援するため、串本町や古座川町などでつくる同校地域協議会(会長=田嶋勝正串本町長)が校内で運営している「くろしお塾」の利用者が大きく増えている。専任講師(塾頭)が常駐するようになった2020年度の利用者数は延べ3844人。このうち約3分の2が自習室利用で、各種講座の受講も前年度に比べ大幅に増加しており、地域協議会の担当者は「環境が整ったことが大きな要因」と話している。

 くろしお塾は、地域協議会が視察した長野県の白馬高校に公営塾が設けられ、学校の魅力の一つになっていることを知り、串本古座高校でも導入を検討。基本的に月謝は不要で、18年4月から始め、学び直し講座や英検・漢検講座を教師OBが講師となって開いてきた。

 当初は校内の一室を借りて講座を開いていたが、19年度から課外活動棟の2階に自習もできる専用の部屋を確保し、20年4月には同校出身で、国語などの非常勤講師も務める酒井豊さん(33)が「塾頭」に就任。授業がないときはくろしお塾に常駐し、生徒に対応できるようになった。

 地域協議会によると、19年度の利用者数の集計は各種講座のみだが、延べ198人。環境が充実した20年度は「自習室利用」が延べ2472人、各種講座が延べ1372人に上った。講座の内訳は「リスニング対策講座」(延べ479人)が最も多く「漢検講座」(同274人)、スマートフォンなどで動画が見られる「デジタルくろしお塾」(同267人)、「英検講座」(延べ158人)などが続いた。漢検・英検講座については地元の小中学生も受講できる。

 くろしお塾にほぼ毎日通っているという3年生の内海嘉乃さん(18)は「全国募集」で大阪府から進学。「家だと集中できないし、分からないところがあると教えてもらえるので、とてもありがたい。目標の大学に受かることができるように頑張りたい」と笑顔。酒井塾頭は「生徒たちは本当によく勉強しており、大きく成績が伸びた生徒もいる。学習環境は都会と田舎の差が大きいといわれるが、田舎でもしっかり勉強できるんだという環境をつくっていきたい」と意気込む。

 地域協議会コーディネーターの松本英明さん(69)は「くろしお塾は、串本古座高校を選んでくれた全員にメリットがあるような取り組みとして始めた。子どもたちが足を運んでくれるようになったのが一番うれしい。県内で唯一、校内に公営塾がある高校としての魅力をアピールしていきたい」と話している。

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