日経平均急騰後の行方を占う政治イベント、自民党総裁候補3氏の政策も比較!

8月下旬まで世界の株価指数と比較して出遅れ感のあった日経平均株価でしたが、9月に入り一転して急騰しています。9月14日までの10営業日のうち、9月9日以外の実に9営業日で上昇し、上げ幅は2,500円を超えています。

相場転換のきっかけは菅首相の自民党総裁選の不出馬表明でした。

秋に向けて動き出した国内政治は今後も相場に影響を与えるのでしょうか。大きな政治イベントを中心に、事前に予習していきましょう。


売り目線の投資家の買戻しも後押し

8月半ばまでは、国内の新型コロナ感染者の急増による景気の先行き不安、内閣支持率の低迷など、日本国内の不安要素が相場の逆風となっていました。日経平均は8月20日には一時27,000円を割れるまで売り込まれ、欧米と比較すると軟調に推移していました。

しかし、27,000円近辺は底堅く、8月末からは徐々に相場は反転基調に。菅首相が自民党総裁選への不出馬を発表した9月3日がターニングポイントとなり、新内閣への期待感から一気にリスクオンへと傾きました。9月14日には終値ベースでバブル以来の31年ぶりの高値を付け、27,000円台で推移していた8月末からは3,000円を超える上昇となっています。

今回の上昇を需給面から見ると、買い越しに転じた海外投資家と逆張りする個人投資家の両者の動きが影響を与えたと考えられます。

まず投資主体別売買動向を見ると、現物の海外投資家は8月3週目に3,737億円の売り越しとなっていたところから一転し、9月1週目には3,669億円の買い越し、現物・先物の合計では6,627億円の買い越しとなっており相場を牽引しています。

また相場が下がると見ていた人のポジションの巻き戻しも影響したと考えられます。個人投資家に人気がある、日経平均ダブルインバース(1357)の動向を見てみましょう。この商品は、日経平均株価が1%下落すると2%上昇する特性を持っています。

信用取引の残高を見ると、低水準で推移していた8月3週目付近から上昇し、9月1週目には今年4月以降で過去最高の水準まで増加しています。この商品は特性上、売却時は相場の買い圧力となるため、踏み上げ相場の様相で相場上昇を後押ししてしまったことも考えられます。

総裁候補3氏の政策を比較

株価は新政権への期待感からポジティブに反応していますが、各候補者はどのような政策を打ち出しているのでしょうか。9月15日時点で総裁選への出馬を表明している、岸田文雄氏、河野太郎氏、高市早苗氏の政策について簡単に見ていきましょう。

短期的には、経済対策、コロナ対応への反応が大きいのではないでしょうか。まず経済政策では、安倍前首相の流れを汲み、「サナエノミクス」を掲げる高市氏の政策が注目を集めています。

「物価2%達成まで財政健全化目標を凍結する」考えを示しており、積極的な財政出動が期待され、賃上げや格差是正などに目を向けている岸田氏・河野氏との差別化要因にもなっています。高市氏が新総裁となった場合は「アベノミクス相場」の再来を期待する向きからマーケットにとっては更なる追い風となるかもしれません。

またコロナ対応では、高市氏・河野氏がロックダウン法制について前向きに検討を進めているとされています。今までの日本では、強力な行動制限は実行せずに新型コロナへの対策をしてきましたが、今年8月には感染拡大を招いたほか、政府の対応が後手後手であると批判の対象ともなりました。

欧米各国を見てもロックダウンが最適解であるかは不透明ではありますが、法整備が進むことは前向きに捉えることができるでしょう。一方で、経済の観点で見ると、強力な行動制限は経済の冷え込みと裏表であるため、法整備が進むことがマーケットをかく乱する要因となりうることは留意が必要かもしれません。

次期総裁選・衆議院総選挙の日程を確認

年末にかけては「年末ラリー」と言われることもあり、日本株は比較的相場が上がりやすい時期となっています。今年はその秋から冬にかけて自民党総裁選、衆議院総選挙を迎えることから、相場への影響が考えられます。それぞれの日程を事前に押さえておきましょう。

まず9月に予定され、新総裁が決まる自民党総裁選です。日程としては9月17日の公示、9月29日の投開票となっています。今回は自民党の党員投票が行われる方式であり、党所属の国会議員383票に加え、党員投票383票の計766票のうち過半数を獲得した候補者が新総裁に、過半数に達した候補者がいなかった場合は決選投票が行われる形となっています。

先で触れたように、各候補者で打ち出している政策は異なるため、どの候補者が新総裁になるかは今後の日本の歩みを大きく左右します。特に今回は国民の約1%となる約113万人の自民党党員の票が結果に反映されることから民意が反映されることになります。公示以降はメディアによる報道も加速することが予想されるため、情報感度を上げ、相場の動きに対し柔軟に対応策を考えておくといいかもしれません。

新首相が決まったあとは衆議院総選挙を控えています。日程としては衆議院の任期満了、10月末のG20の会合などの日程を踏まえ、10月26日開示、11月7日投開票、あるいは11月2日開示、11月14日投開票が有力とされています。

11月初旬というと、ワクチン開発の報道により世界的に株高となった昨年秋の相場が記憶に新しいのではないでしょうか。昨年もワクチン相場の前にアメリカ大統領選があり、選挙結果が出る前は不安的な相場展開となったのち、急激なリスクオンへの巻き戻しとなりました。すでに高値圏まで上昇しているため、今後の値動き次第ではあるものの、日本株においては今年も選挙前は様子見、通過後はリスクオンといった展開になるか注目が集まります。

秋の注目イベントとして従前から考えられていた選挙ではありますが、マーケットへの影響は当初の予定よりも早く出てきた感があります。また国内の選挙動向だけでなく、海外に目を向けると米国の金融緩和縮小など、注目のトピックがいくつか存在します。

今年の秋は大きな相場の動きにより目を向けることが、投資成果につながるかもしれません。

<文・Finatextホールディングスアナリスト 菅原良介>

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