北半球と南半球の夜空をつなぎ合わせた美しい星空の画像、ヨーロッパ南天天文台が公開

【▲ カナリア諸島のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台(上半分)とチリのラ・シヤ天文台(下半分)で撮影された夜空をつなぎ合わせた画像(Credit: P. Horálek & J. C. Casado / ESO)】

地上で暮らす私たちが眺めることができる夜空は、観測者を中心とした仮想の球体である天球のうち地平線から上の部分に限られます。地平線から下の部分は地球に遮られるので、地上にいる限り天球全体の星空を一度に眺めることはできません。

冒頭に掲載したのは、そんな不可能なシチュエーションがデジタル処理で再現された美しい星空の画像です。ヨーロッパ南天天文台(ESO)から公開されているこちらの画像は写真家のペトル・ホラーレク(Petr Horálek)さんフアン・カルロス・カサード(Juan Carlos Casado)さんによって撮影されたもので、上半分が北半球のカナリア諸島にあるカナリア天体物理学研究所のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台(北緯29度)、下半分が南半球のチリにあるESOのラ・シヤ天文台(南緯29度)で撮影されました。

北半球と南半球で撮影された夜空をつなぎ合わせたこの画像では、天の川が北から南へと蛇行するようにかかっているのが印象的です。画像の中央には上下に伸びる黄道光(こうどうこう)も写っています。黄道光とは天球における太陽の見かけの通り道である黄道に沿って見える淡い光の帯のことで、黄道に沿うように分布する宇宙空間の塵(惑星間塵)に散乱された太陽光がその正体です。ちなみに、北半球の黄道光と重なるように明るく輝いているのは金星です。

また、同じ星空を球面投影した次の画像もあわせて公開されています。こちらの画像では北と南の夜空にかかる天の川が全体で大きなリングを描いており、天の川銀河の銀河円盤を内側から見た姿であることを実感させられます。

【▲ 冒頭の画像を球面投影したバージョン。天の川がリングを描いている(Credit: P. Horálek & J. C. Casado / ESO)】

実際には見ることができない仮想の星空ではありますが、地上の照明や人工衛星がもたらす光害(ひかりがい)によって自然な明るさの夜空が失われつつあるとされる昨今、望遠鏡を使わずに人間の目だけで見ることができる夜空の美しさに思いを馳せながらじっくりと眺めたくなります。画像はESOの今週の画像「North Meets South」として、2021年9月13日付で公開されています。

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Image Credit: P. Horálek & J. C. Casado / ESO
Source: ESO
文/松村武宏

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