【韓国】【ウィズコロナ】SB出資のリド、日本進出へ[IT]

韓国エドテック熱く(上)

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右端はグロースチームのヴァイス・プレジデントの尹熙旭氏、左端はグローバルPRマネジャーを努める桂基潤氏=10日、ソウル(NNA撮影)

教育とITを融合させた「エドテック」を手掛ける韓国発スタートアップが元気だ。テクノロジーの進化により、時と場所を問わず世界中の魅力的な学習コンテンツにアクセスできる機会が増えている。新型コロナウイルス感染症の拡大で急伸する業界の今を2回に分けて報告する。(上)では、ソフトバンクグループの投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の2号ファンドが出資し、日本進出を控えるRiiid(リド)を取り上げる。

コロナ禍を受けて教育機関でリモート学習の重要性への認識が高まる中、投資家の間でもエドテックに関心が高まっている。教育関係の調査会社HolonIQによると、2020年のエドテック向けベンチャーキャピタルの投資額は全世界で161億米ドル(約1兆7,700億円)と、前年の倍以上に増えた。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの2号ファンドが今年5月に1億7,500万米ドルを出資したリドも、今後の急成長が期待されるエドテックの1つ。今年2月には、米調査会社のCBインサイトからグローバル教育産業を再編する「ゲームチェンジャー」に選定された。

リドは、米国の大学を卒業してシリコンバレーでの起業経験もあるチャン・ヨンジュン代表が創業した。久しぶりに帰国した母国で、大学入試や公務員試験などの「受験地獄」に追いやられた若者の姿に心を痛め、「人工知能(AI)がデータに基づいて適切な教材をユーザーに提供できれば、所得に応じた教育レベル格差を解消できるはずだ」と思い立ったのがきっかけだった。社名には、◇inequality(不平等)◇inconsistency(不一致)◇ inefficiency(非効率)——の3つの「i」をAI技術とアルゴリズムでRid(取り除く)するという意味を込めたという。

■20時間で165点アップも

同社が提供するTOEIC対策アプリ「リドチューター」は、利用者のレベルテストの結果をAIが分析し、TOEICのスコアを瞬時に予測できるのが特長。精度は95%という高さで、リスニングや語彙(ごい)、文法などの各分野別の実力も分析できる。

リドチューターは希望者向けに、3億件以上のTOEICの学習データを基に最速で高得点を獲得できるようカスタマイズされた学習カリキュラムを提供する。同社は学会で「リドチューターを使って20時間学習すれば、平均165点上昇する」という実験結果を論文にして発表した。

日本では、市場の動向や競合他社の動きを見た上で、競争力のある価格を提示する予定だ。同社グローバルPRマネジャーを努める桂基潤(ケ・ギユン)さんは「アプリはTOEIC対策に必要な全ての教材を提供するため、生徒は高価なTOEIC対策の本を購入したり、専門塾に通ったりする必要がなくなる」と説明。その上で、「教育コストを引き下げることで地方と都会、高所得者と低所得者の格差を埋めるだけでなく、塾に通う時間の節約にもつながる」との見解を示す。

リドチューターでは利用者のレベルテストの結果をAIが分析し、TOEICのスコアを瞬時に予測する(リド提供)

■日本市場の攻略に本腰

17年のサービス開始以来、既に韓国と日本で約300万人の学生・社会人がリドチューターを利用している。年内には日本に現地法人を設立し、本格的に日本市場攻略に乗り出す計画だ。

日本でTOEIC試験を実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(東京都千代田区)によると、日本では20年度に約170万人がTOEICを受験しており、利用者のさらなる確保を目指す。TOEIC対策だけでなく、幼稚園年長から小中高や成人向けの英語教育のほか、企業の英語研修にも力を入れていく考えだ。

前出の桂さんは「日韓だけでなく、現在の教育市場は高コストと詰め込み講義中心による低効率が課題となっている。AI技術を通じて市場の創造的破壊を主導し、少数の有名講師に依存した教育市場の再編と教育機会の平準化を実現していく」と意気込む。

日本では昨年、新型コロナによる長期休校のため多くの学校で授業時間が不足し、学習の遅れや所得の格差による習熟度の違いが浮き彫りになった。こういう現状からも、リドのコンセプトが受け入れられる素地は十分に整っている。

■事業領域をさらに拡大

リドは高度なAI技術を武器に、ドメイン(事業領域)も拡大する構えだ。韓国では、GMAT(ビジネススクール入試共通試験)などの学力判定テストに備えるためのアプリのベータ(試験)版を発表したほか、宅地建物取引士やファイナンシャルプランナーなど資格試験準備に対応した教育用アプリも開発。20年には、事業拡大に向けて米国にも支社を設立した。

リドで成長戦略を担当するグロースチームのリーダー、尹熙旭(ユン・ヒウク)さんは「ソフトバンク・ビジョン・ファンドには技術力の高さと将来性を評価してもらった。エドテック企業という枠を超えて『AIテクノロジー企業』に進化して、同社の目利きの確かさを証明したい」と話した。

<リド>

14年5月の設立。本社はソウルで、AIの専門家・ソフトウエアエンジニア70人を含む計150人(21年6月時点)が勤務。ベトナムやタイ、台湾でも「リドチューター」のサービスを開始した。

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