池袋暴走「控訴しない」意向に 遺族「確定まで見守る」 90歳被告の収監が焦点

 歩行者ら2人が死亡、9人が重軽傷を負った東京・池袋の暴走事故で自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われ、禁錮5年の実刑判決を受けた飯塚幸三被告(90)が控訴しない意向を固め、実刑が確定する見通しとなった。刑務所への収監がどうなるかが今後の焦点となる。 高齢で体調に不安を抱えるため、弁護人が執行停止を求める可能性もある。

 2019年4月の事故で妻の松永真菜さん=当時(31)、長女莉子ちゃん=同(3)=を亡くした拓也さん(35)は判決後に「控訴してほしくない。事故と向き合ってほしい」と訴えており、15日の取材に「確定するまで動向を見守りたい」と話した。

 真菜さんの父・上原義教さん(64)は控訴期限が16日であることを念頭に「今の気持ちを変えないでほしい」と飯塚被告に求めた。

 上原さんは17日、都内で拓也さんとともに記者会見を開く予定。上原さんは「(控訴断念は)ニュースで知ったが正式に決まるのは16日。会見の場で改めて思いを述べたい」と話した。

 飯塚被告は昨年10月の初公判以降、車いすで出廷し、被告人質問では「パーキンソン症候群の疑いがある」と話した。現在は自力で歩くことができなくなっているという。

 刑事訴訟法は、「著しく健康を害するときや生命を保てない恐れがあるとき」や「70歳以上」の場合、刑の執行を停止できると規定し、弁護人などの求めに応じて検察が執行停止を判断することもある。北海道拓殖銀行の不正融資事件で2009年に82歳で懲役2年6月の実刑が確定した元頭取(11年死去)に、検察は高齢や病気を理由に収監を見送った。

 今月2日の東京地裁判決は被告の無罪主張を退け、ブレーキと間違えてアクセルを踏み続けた過失が事故原因と認定。被告が高齢であることなどを考慮しても、禁錮5年が相当と結論付けた。

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