コロナ禍の子育て「話し相手ほしい」 見守りサロンなど地域活動制限、募る不安 「孤立する産後」㊤

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少人数に限定して開かれた春日校区の子育てサロン。コロナ禍で母親の孤立感が増す中、適切な支援が求められる=7月中旬、熊本市西区

 生後数カ月、母乳がうまく飲めず、朝から晩まで30分置きに泣き続ける息子。ろくに眠ることもできず、母親の30代女性=熊本市=は常に息が詰まるような思いだった。泣く息子を布団に置いたまま家を飛び出し、無心で車を走らせたこともある。

 「あの時は『対向車に向かってハンドルを切ったら楽になれるかも』と本気で考えた」。数十分の“クールダウン”で我に帰り、自宅に戻ると息子は泣き疲れて寝ていた。

 夫は育児に協力的だが、日中は仕事。新型コロナウイルス禍で友人にも気軽に会えない。日々孤独と格闘し、胸は常に「ざわざわ」していた。心療内科で安定剤を処方してもらい、SNSで同じ境遇の母親とつながったことが支えとなり、少しずつ落ち着いた。

 出産後、ホルモンバランスの崩れが原因の「マタニティーブルー」が長引く形で、精神症状が出るとされる「産後うつ」。コロナ禍で増す孤立感がそのリスクを高めており、ケアの重要性が指摘されている。

 「母親とその子どもを長く支えるには『地域の見守り』が重要」。長年、春日校区で主任児童委員を務めた中島花江さん(69)は強調する。地域で子どもが生まれると生後2~4カ月で訪問し、子育てに関して助言する主任児童委員。子育てサロン(サークル)なども開き、母親と子どもの成長を見守ってきた。

 ただ、コロナ禍で活動が制限され、訪問はできずサロンもほとんど開けないまま。これまでは子どもが生まれるたびに市から名簿が渡されていたが、昨年度は74人が生まれたという「数字」だけが知らされた。同委員の松倉麻美さん(62)と宮本美智子さん(49)は「どこにどんな赤ちゃんがいるのか、把握できなくなってしまった」と頭を抱える。

 現在は、保健師など市の専門職が原則第1子を訪問するのみ。地域住民として、より身近な立場で見守る主任児童委員からは「第2子以降も含め、産後の母親が子育てに行き詰まっていないか心配」との声が上がる。

 JR熊本駅がある同校区はマンションの新築が相次ぎ、新しい住民が多い地域。松倉さんらは公園などで会った親子に声を掛け続けており、ある日出会った転勤族の母親からは「毎日引きこもりがち。話し相手がほしい」と打ち明けられた。「他にも孤独でつらい思いをしている母親がいるのではないか」と懸念する。

 熊本地震では、サロンなどで出会ったママ友同士が互いに連絡を取り合ったり、おむつなどの支援物資を届けたりと、日ごろの活動が実を結んだ経験もある。コロナ禍での活動制限の影響が後を引かないか、不安を募らせている。

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 新型コロナウイルスの感染拡大は、心身ともに不安定になりがちな産後の母親の支援にも影響を及ぼしている。活動が制限され、人間関係の希薄化で孤立感を募らせる母親が増える中、救いの手を差し伸べようと奮闘する人たちを追った。(河北希)