最先端目指す朝鮮のICT教育 小学校の授業にもAR、AI導入

朝鮮では近年、教育のICT化に積極的に取り組んでいる。最先端技術を取り入れた平壌教員大学(小学校、幼稚園の教員養成機関、2018年リニューアル竣工)を拠点として、各学校で教室や設備、教材のデジタル化、それに沿った教育内容の改善に努めている。

朝鮮におけるICT教育はどこまで進んだのか? 平壌市内の小学校2校の実践例を紹介する。

金成柱小学校(中区域大同門洞)の3階廊下には「仮想環境舞台」なる設備がある。2018年に同校の教員らが自ら研究・制作したもので、バーチャルな環境に自分の姿が映し出されることで、よりリアルな環境で学べるというもの。拡張現実(AR、Augmented Reality)の技術を応用したものだ。

例えば英語の授業。児童たちが緑色のスクリーンの前に立つとテレビモニターに映された中央動物園に児童たちの姿が現れる。児童たちはテレビモニターを見ながら動作を行い、実際に中央動物園を見学しているような感覚を得られる。このような環境の中で英会話を行うことで、より具体的で生き生きとした会話を促すことができる。

金成柱小学校での授業の様子。左手のテレビモニターに映された中央動物園の環境の中に児童らが投影されているのがわかる

また、同校では初歩的なAI音声認識システムを用いて、国内150カ所の映像資料を音声で操作できる教育プログラムを開発。教員や児童らがマイクに向かって施設の名前を話すと、テレビ画面に該当する施設の動画が映されるというものだ。

チョン・スニ教員(51)は「コンピューターを操作せずに音声に従って映像が流れるので、テンポよく授業を進められ、児童たちの集中力も高められる」と話す。

また、児童らの成績を音声認識でテキスト化するプログラムも制作し、教授活動に役立てている。金成柱小学校では今後、AI音声認識システムを検索や入力などさまざまに活用して、より高い質の教育ICT化実現をめざすとしている。

ARの活用事例は、平壌第4小学校(中区域西蒼洞)の実践にも見ることができる。

自然教科の授業で、この日は生態系の食物連鎖について学んでいた。授業の目的は、生態系が食物連鎖と呼ばれる「食べる―食べられる」関係でつながっていること、「食べる―食べられる」関係にある生態系の食物連鎖は等しい生態環境において可能だということを認識することにある。

テレビモニターには川の中を泳ぐ魚たちの姿が映されている。教員が実物投影機に「雷魚」と書かれたカードをかざすと、テレビモニターに雷魚が出現し、川の中を泳ぎながら小魚を捕食していく。

次に使うカードは「サメ」だ。実物投影機にカードをかざすと先ほどと同じようにテレビモニターに映る川の中にサメが現れるが、サメは次の瞬間死んでしまう。海の動物であるサメは川では生息できないためだ。この授業を通じて、弱肉強食という食物連鎖の単純な側面だけでなく、食物連鎖において生体環境や場所が関係することを学ぶ。

平壌第4小学校の教室

このようなICT技術の導入について、キム・オッキョン教員(37)は「大切なのは授業の過程において、どのタイミングで児童たちが好む方法を効果的に取り入れるかだ」と話す。むやみやたらにデジタル技術を導入するのではなく、「児童たち一人ひとりの顔を思い浮かべながら特性に即した教育方法を創造している」と話した。

教育のICT化は現在、学校単体だけでなく全国レベルで取り組まれている。近年、教育部門においては全国の学校をつなぐ情報通信ネットワークを構築した。ここに教育部門の指導を担う国家機関の教育委員会から全国の小学校、初級中学校(日本の中学校)、高級中学校(高校)が網羅されている。このネットワークを利用して、各校の教員同士の会議や模範授業、学科別コンテストの実施などを行っている。

授業でコンピューターを使用する児童ら(平壌第4小学校)

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