湾岸のさびた鉄橋、遊歩道に

 【汐留鉄道俱楽部】東京・晴海と豊洲の間にある晴海運河をまたぐ「旧晴海鉄道橋」が橋脚の耐震補強をして遊歩道に生まれ変わることになり、補強工事も始まった。特に五輪の選手村で多少知名度がアップした晴海に住む人々にとっては、久しぶりの地域密着型の朗報だったことだろう。 

 なぜか。それは30年以上も列車が通らず風雨にさらされながら真っ茶色にさびついて残った鉄橋が、これからも解体されず生き続けることになったからだ。  

湾岸部に残る旧晴海鉄道橋

 鉄橋は1957(昭和32)年、晴海ふ頭に荷揚げされた貨物を運搬するために敷設された路線で長さは約190メートル。ディーゼル機関車が貨車を引いて橋を渡り深川方面を経て国鉄線で各地に運んだ。機関車や貨車の重量に耐えられる当時としては技術の粋を集めた画期的な造りの鉄橋とされ、高度経済成長を支えてきた〝昭和の象徴〟といえる。 

 その後、トラック輸送などの影響を受けて、89年に役割を終えて路線は廃止された。しかし、その後もレールを残したまま、取り壊されることもなくここだけ時間が止まった世界に包まれていた。 

 やがて豊洲側、晴海側ともに広大な土地が再開発され、タワーマンションや商業施設、オフィスビルなどが林立する街に生まれ変わった。時代を超えて超高層ビルと鉄橋が並ぶ不思議な光景は、地元の人間は見慣れていても、初めて見た人には何とも場違いな巨大建造物に圧倒されたことだろう。 

 後世に残すべき大切な遺構として認められ、遊歩道として保存されることは大変うれしい。 

 気掛かりなのは残し方だ。茶色のレールや朽ちた枕木、砂利、雑草、そして何と言っても側面のさびた鉄のアーチ部分はどうなるのだろうか。管理する東京都港湾局は「歴史的価値を考慮しながらバリアフリーにも留意し整備をしていく」と話す。歩道橋の具体的な青写真はまだできていないようだ。  

「立入禁止」の札の奥には茶色のレールと朽ちた枕木、雑草までがたたずんでいた=2016年3月

 最低でもアーチ部分だけは変えずに残してほしい。できればレールや砂利も…。課題は多いだろうが、鉄道遺構は可能な限り〝そのまま〟がふさわしい。 

 ☆共同通信・植村昌則(うえむら・まさのり)

© 一般社団法人共同通信社