耕作放棄地でトウモロコシ 五ケ瀬・鳥の巣棚田

棚田で収穫したトウモロコシを手に笑顔を見せる地域住民やボランティア

 日本の棚田百選に選ばれている五ケ瀬町三ケ所の「鳥の巣棚田」で、耕作放棄地を活用したトウモロコシ栽培が行われている。6年目となる今夏の収穫を終え、無農薬で育てた甘さが自慢の「ゴールドラッシュ」は町内外のファンに喜ばれた。一方で、栽培する地域住民の多くが80歳を超え、後継者の確保が急務となっている。
 鳥の巣棚田は7年前まで、耕作放棄地が目立ち景観を損ねていた。2015年、見かねた地元農家の宮本紀昭さん(81)を中心に地域住民7人が立ち上がった。同町のNPO法人・五ケ瀬自然学校(杉田英治理事長)の協力を受け、所有者から借りた田んぼ7枚(35アール)の再生に着手。宮本さんは「背丈より高い雑草、雑木に覆われていた荒れ地を重機で切り開いた。水管理の手間や収益性を考え、コメからトウモロコシへ転作した」と振り返る。同年には農林水産省の農村集落活性化事業のモデル地区にも選ばれ、栽培は軌道に乗った。
 草刈りや鳥獣害対策など苦労もあるが、今年も7月下旬~8月半ばに無事収穫を終えた。糖度の高い早朝取れにこだわるため作業は毎日、午前5時半にスタート。約500本を収穫し、同9時半には出荷する。トウモロコシのブランド名「老い知らず」は、地域学習で昨年見学に訪れた五ケ瀬中等教育学校6年生が考案したもの。元気な高齢メンバー7人にちなみ名付けたという。
 ところが、高齢を理由に今年からメンバー2人が作業に参加できなくなった。宮本さんは「来季以降も続けられるか分からない。意欲ある若い人が見つかれば、ノウハウを伝えたい。元の荒れ地に戻ってしまえば、棚田百選や世界農業遺産の認定に影響しかねない」と危機感を募らせる。
 後継者探しに協力する五ケ瀬自然学校スタッフの小林由明さん(64)は「田舎に飛び込んでくる若者はいる。生活に必要な収益を得られる土台をつくり、人に自慢できるかっこいい仕事だということを発信していきたい」と話している。

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