<社説>6氏に琉球新報賞 情熱傾けた功績は誇り

 第57回琉球新報賞は6氏に贈られる。沖縄の社会、経済、文化など各分野の発展に尽くした功績に深く感謝したい。 経済・産業功労は2氏が受賞する。宮城弘岩氏は「経済の原点にものづくりはある」という信念を貫き、県産品の販路拡大をけん引してきた。沖縄の産業まつりで「沖縄発本土行き」を掲げ販路拡大へ挑戦を続けた。銀座に県産品のアンテナ店「わしたショップ」を開店させ、沖縄ブームの先駆けとなった。沖縄物産企業連合を設立し「沖縄宝島」の全国展開を手掛け、物産交易を通じて「沖縄の経済自立」を追求した。

 湧川昌秀氏は沖縄ガスの社長、会長として、継続的、科学的に製品の品質を管理する「QC(クオリティー・コントロール)」活動を社内外で推進。功績が認められ県内で初めてQCサークル経営者賞に選ばれた。社会インフラの都市ガス供給者として、品質の管理と向上に心を傾けてきた。県工業連合会会長時代に県産品の普及推進に努めた。

 社会・教育功労は2氏に決まった。宮城征四郎氏は、在宅酸素療法を全国でいち早く沖縄に取り入れるなど、医療技術の発展に貢献してきた。70年代から臨床教育の先進地である米国の手法を県立中部病院で実践した。指導医の下で先輩研修医が後輩研修医を指導する「屋根瓦方式」と呼ばれるチーム医療を導入。同院を全国屈指の臨床研修病院へと導いた。未来を担う医師の育成に力を注ぐ。

 大嶺千枝子氏は琉球政府時代に看護の道を歩み始めた。日本復帰後は、沖縄看護学校の新設や県立看護大学の開学準備に関わり、県看護協会長を務めた。長年の資料収集や執筆を経て、日本の看護史から欠落している沖縄特有で先進的な看護制度に光を当てた。琉球政府立の看護学校が琉球大学と提携した教育制度や、保健所保健師が地域に駐在した活動が挙げられる。

 文化・芸術功労は安次富順子氏に贈られる。琉球料理の体系化に取り組んだ母親の故新島正子さんと共に、琉球料理の継承・発展に力を尽くした。王朝菓子の研究と再現に携わって半世紀になる。琉球王国滅亡や沖縄戦で文献資料を焼失し継承が危ぶまれた王朝菓子は人から人へと手業で継がれ「途絶えさせぬ」という情熱に支えられる。民間伝承の茶「ブクブクー」を聞き取りや文献調査で復元した。

 スポーツ功労は佐久本嗣男氏に贈られる。空手本場の地から80年代後半に世界選手権3連覇を含め、世界大会で個人形7連覇の偉業を達成した。指導者としても多くの世界王者を輩出してきた。東京五輪で初めて採用された空手男子形でまな弟子の喜友名諒選手が金メダルを獲得した。

 6氏は米国統治から日本復帰へと続く激動の時代を、それぞれの分野に情熱を傾け、沖縄の発展に大きく貢献した。その功績は県民の財産であり誇りである。

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