「世界一の二遊間コンビ」から15年… 川崎宗則&西岡剛が“過去最高”に笑顔な訳

BCリーグ東地区のオールスターゲームではバッテリーを組んだ栃木の西岡剛(左)と川崎宗則【写真:川村虎大】

BCリーグ東地区のオールスターゲームで“バッテリー結成”

列島が沸いた歓喜の瞬間から、もう15年がたった。侍ジャパンの二遊間を組み、上位打線を担った2人の若武者は、40歳と37歳になった。誰かに言われなくても、キャリアの終盤なのは分かっている。それでも、グラウンドに立てば存在感は際立つ。ルートインBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスに身を置く川崎宗則内野手と西岡剛内野手は、この夜も心底楽しそうだった。

栃木・小山運動公園野球場で12日に行われた「BCL東地区オールスターゲーム2021」。選出された2人は、栃木と茨城アストロプラネッツで編成する「北関東ヤンキース」の一員として出場。埼玉武蔵ヒートベアーズと神奈川フューチャードリームスでつくる「南関東シティボーイズ」と戦った。

川崎は「1番・遊撃」、西岡は「2番・二塁」。栃木で一緒にプレーを始めて2年目。球宴の“主役”であることには間違いなかった。さらに3回には、バッテリーを結成。今季の公式戦でも実現した「投手・西岡」「捕手・川崎」に、スタンドが盛り上がる。結果としては7点を失って1死で降板したが、夢舞台ならではの演出に、チームを率いた栃木の寺内崇幸監督も「やってよかった」とうなずいた。

この2人が並び立つと、自然と思い出す。2006年に初めて開催されたWBC。キューバとの決勝では川崎が1番、西岡が2番で切り込み役を担い、世界一に貢献した。20代前半だった2人は球界を代表する内野手となり、ともに海を渡った。競技人生の岐路にも直面しながら、同じだけ歳を重ね、辿りついた独立リーグの地。アプローチは違えど、体現しようとする思いはよく似ている。

独立Lでの日々…西岡「視野広がった」川崎「したいようにやる」

阪神を戦力外となり、NPB復帰を目指して2019年に栃木入りした西岡。今でも「現役でいる以上は最高峰の舞台を目指す」と言う。その一方で、スピードスターとして突っ走ってきた野球人生で、見逃してきた景色や思い、課題があることにも気づいた。超エリートだった自らとは違い、泥臭く上を目指す若き独立リーガーたちの姿や、NPBとは全く異なる環境……。さらに野球界全体を俯瞰できるようにもなり「すごく視野が広がった」とうなずく。

2019年は台湾プロ野球でプレーし、コロナ禍の影響で2020年途中から栃木に加わった川崎。「NPBはもういい」と断言し、新たな環境を楽しむ。「誰に文句を言われることもない、僕の人生ですから、したいようにやる」。若手に常識を押し付けることはしない。ただ、聞かれれば自らの引き出しを開けて見せる。日本、米国、台湾を見てきた“ムネリンの目”は、旧態依然とした部分も残る球界の課題も鋭く突く。

栃木で再会した2人は、野球の本質を問いかけているようにも見える。西岡はよく言う。「小さい頃は楽しかったのに、仕事になった途端、野球がつらくなる。仕事だから仕方ないけど、野球って本来楽しいもんやから」。グラウンドでしか感じられないワクワクに取りつかれた姿が、見ているファンを魅了する。球宴でのバッテリー結成も、そのひとつ。やりたいことをやり、言いたいことを言い、独立リーグという“草の根”から球界にボールを投げていく。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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