再三の走塁死で勝ち越せず 苦しむ鷹・工藤監督は6回の好機でなぜリチャードを代えた?

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

9回2死二塁で川島が左前安打を放つも、本塁を狙った釜元は本塁で憤死

■ソフトバンク 1ー1 ロッテ(16日・PayPayドーム)

ソフトバンクは16日、本拠地PayPayドームで行われたロッテ戦に1-1で引き分けた。終盤に再三の勝ち越しチャンスがありながらも、得点できずに連敗は止められず。6回の代打策が流れを変え、7回からは3イニング連続で本塁を狙った走者が走塁死するチグハグな攻撃で、ロッテとの大事な直接対決は1分け2敗に終わった。

歓声がため息に変わった。ベンチを飛び出した選手たちも、その場で呆然と立ち尽くした。同点で迎えた9回2死二塁。川島が放った打球が左前に弾む。代走の釜元は三塁を蹴って本塁に突入。左翼の荻野から好返球が届く。わずかな差でタッチアウト。ロッテナインの歓喜の声を対照的に、ソフトバンクベンチとファンは沈黙に包まれた。

再三のチャンスがことごとく実を結ばなかった。7回2死一、三塁でハーマンが柳田へ投じた4球目を捕手の田村が逸らした。三塁走者の甲斐が本塁へ突っ込むも、タッチアウト。リプレー検証でも判定は覆らなかった。さらに8回にも1死満塁のチャンスを作り、今宮の打球は右翼への浅いライナーに。この打球で三塁走者の上林は一度、本塁を狙ってスタートを切ったものの、途中でストップをかけ、三塁へと逆戻り。捕手の田村からの送球が僅かに早くこれもタッチアウト。リプレー検証でも覆らなかった。

工藤公康監督は試合後、これらの走塁死について、こう説明した。

再三の走塁死に対して、工藤監督が語った言葉とは…

「(9回は)アウトになったのも結果論だし、いかせたのも結果論、いってなければ柳田くんだったと言ってもそれも結果論。あそこの場面でいかせずに止めるかと言ったら(できない)。送球が逸れるかもしれないし、ナイスボールを投げた相手がよかったという風に思いますよ」

「上林くんがアウトになったけど、あれもナイスボールだったし、取ってからも早かった。なかなかあれじゃ帰ってこれなかった。行こうという気持ちが出てて、最終的には戻れなかったけど、ギリギリのプレーだったんでしょうがないかな、と思います。(上林は)投げるボールを見て、戻ったと思うんですよね。(コーチャーの)声で反応するのは難しいかな、と思う。ギリギリのプレーだった。逸れたら、というところまで見ていたら、出てしまうケースもあるかな、と」

どちらのプレーに対しても、責めることはせず。1点を狙う選手の気持ちの表れとして捉えていた。

選手たちの「なんとかしたい」という気持ちのこもったプレーが随所に見られたこの試合。その中で、6回の攻撃が試合の流れを変えるポイントになったのかもしれない。

6回2死一、二塁でリチャードに代打・長谷川を送った意図とは…

1点をリードして迎えたこの回。先頭の柳田が中前安打、デスパイネが左前安打を放って出塁した。中村晃が二飛に倒れ、2死一、二塁となると、ベンチは若き大砲のリチャードに代えて、代打の切り札である長谷川を早々に送り込んだ。

1軍初昇格後の打率は.235ながら、3本塁打10打点と結果を残してきたリチャード。得点圏打率も.375と悪くなく、前日の試合でも2安打を放っており、期待した人も多いはずだ。そのリチャードへの代打起用。この策の狙いはどこにあったのか。

「なかなか点が取れなかったので、やっぱりもう1点取れれば、という考えで早めに代打を送りました。(リチャードは)今日はちょっと合ってなかったな、と思いました。タイミング取りづらそうにしていて、本人とも話したら『早かったり、遅かったりがあった』と。結果的に投手は代わりましたけど、ちょっと早めに仕掛けようと。マルちゃんもいいピッチングをしていたので、もう1点あれば変わる、と思ったので早めに仕掛けました」

工藤監督はこう明かす。リチャードはこの日、ロッテ先発の二木に対して見逃し三振、ニゴロと凡退。二木への対応する姿にタイミングが合っていないと判断し、早めの仕掛けとして代打起用を決断したという。長谷川が登場すると、ロッテベンチはすぐさま東妻にスイッチ。結果的には長谷川は左飛に倒れて追加点は奪えず。直後の7回にマルティネスが同点に追いつかれた。

歯車の噛み合わないまま、ロッテとの3連戦を負け越したソフトバンク。「必死に頑張ってなんとかしようというのは伝わってくる。それがいい風に出る時と、うまく出ない時と、あることかなと思うので、あとはそれが1つずつ繋がっていけば、必ずいい方向に行くと思う。ダメだったことを嘆くよりも、しっかりと次に向けて、という考え方に持っていった方がプラスになると思う」とも工藤監督は語る。首位とは8.5ゲーム差、3位の楽天とは3ゲーム差。残り29試合。勢いづくような勝利が欲しい。

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(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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