コロナ禍でのうつが増えています! 〜事例から予防について考える〜

世界的にうつが増えている

新型コロナウイルスのワクチン接種が日々進んでいますが、変異株の流行などの影響もあり、なかなか感染の拡大に歯止めがかかりません。
度重なる緊急事態宣言や自粛の呼びかけも効力が薄れてきたり、長引くウイルスとの戦いに疲弊している方も多いのではないでしょうか。

2021年5月に、経済協力開発機構(OECD)がメンタルヘルスに関する国際調査の結果を発表しました。
それによると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、日本ではうつ病・うつ状態の人の割合がコロナ流行前の7.9%から2020年には17.3%と2倍以上に増えています。

以下の図は、主要国(G7)の状況ですが、アメリカでは6.6%から23.5%と大幅に増加しており、世界的にみてもうつ病・うつ状態の人の割合が明らかに増えていることがわかります。
特に、若い世代や独居の方や経済的不安を経験している方で深刻化しているようです。

「うつ病になる」とは?

うつ病は、精神的・身体的ストレスが重なり、脳の機能障害が起きて、ものの受け止め方・見方が否定的になってしまう病気です。
たとえば、一日中気分が落ち込んでいる、食欲がない(食べすぎてしまう)、眠れない(眠りすぎてしまう)、何をしても楽しめない、ちょっとしたことで泣きそうになる、自分がダメな人間だと感じてしまうなど……。

このような状態が2週間以上続くときはうつ病になっている可能性があります。

周囲の人がメンタル不調に気づくポイントとしては、家族や友人なら、元気がない、ぼんやりしている、食欲がない、以前からの趣味に興味を示さないなどです。
職場であれば、欠勤・遅刻が増える、ミスが増える、雑談や報連相がなくなる、服装が乱れるなどが挙げられます。

実際にうつ状態になると起きること

一例ですが、筆者の周りで聞いた体験を少し変えて紹介します。

20代独居の女性のお話しです。
元々、外出や旅行などが好きでしたが、コロナ禍となり外出ができず、仕事も完全リモートワークとなったことで、人との関わりが極端に減り、外での楽しみも制限されました。
慣れない環境での仕事で上手くいかないことが増えたり、誰かと話したり相談することも減り、少しずつ気持ちが落ち込んでいきました。
何をするにもやる気が起きないので生活リズムが乱れ、朝起きられない、体が重くベッドから起きるのもしんどい、仕事はなんとかこなすけれど、休日は1日中何もできないという状態が1ヶ月以上続きました。
人と会うのが怖くなり、1人でいるとネガティブな考えが頭の中を駆け巡り、消えてしまいたいという考えが何度も浮かんだそうです。

その後、職場の人の勧めで医療機関に通い、適切な治療を受けたことで今は元気になっています。
うつ状態だった時のことを思い出すと、あの時の自分は自分ではないみたいだったと言っていました。

うつは予防がとても大切

うつ状態にあるときは、一生暗いトンネルの中に閉じ込められたままなのではないかと不安になるかもしれません。
回復まである程度時間はかかりますが、必ずよくなるので大丈夫です。
もしうつになってしまっても、焦らずに諦めずにゆっくり心と体を休めてあげましょう。

このように今までは普通に暮らしてきた人が、コロナ禍での予期せぬ環境の変化により、うつを引き起こすというケースがより身近なものとなっており、誰もがかかりうる病気です。

うつを予防するためには、以下のようなことがとても大切です。

・ 生活リズムが崩れないよう普段以上に心がける
・ コロナ関連の暗いニュースは見すぎない
・ 自分なりの楽しみや息抜きを見つける(映画を見る、読書をする、スポーツをするなど)
・ 普段からなるべく周囲の人と話したり相談できるようにして一人でため込まないこと

加えて、自分の体調や心の変化を見逃さないようにしましょう。

そして、自分の身を守るのはもちろん、職場の同僚や部下、家族、友人など身近な人を気にかけられるように、うつ病に関する最低限の知識を身に着けておくことが大切です。
もし、身近な人のメンタル不調に気づいたら、声をかけて話を聞いてあげたり、職場の上司や人事に相談したり、産業医・保健師などの専門職や医療機関に繋いだりと、周りを気にかけていただければと思います。
うつを未然に防ぎ、自分と大切な人を守りましょう。

<参考>
OECD国際調査「Tackling the mental health impact of the COVID-19 crisis: An integrated, whole-of-society response」
・ 山田和夫『うつのすべてが分かる本』(つちや書店)

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