自殺者数、もやし購入金額、強盗件数…最新の統計・データから見る日本の景況感

8月景気ウォッチャー調査の現状判断DIは、前月比13.7ポイント低下の34.7と3カ月ぶりに悪化しました。

調査は8月25日から31日まで実施されました。全国の新型コロナウイルスの新規感染者が過去最大だったのが、調査直前の8月20日の25,868人。調査期間前半の25日~28日は2万人台と多かった時期に重なりました。

調査では「新型コロナウイルス禍における県内の感染者数増加、緊急事態宣言の延長等により、来客数の減少、衣料品、食料品等の売上減少に歯止めが掛からない状況で、全体的に厳しさが増している」(南関東の百貨店)とのコメントがありました。7月から大幅に低下した業種は、百貨店、旅行・交通関連、レジャー施設関連、飲食関連などです。

しかし、明るい面もあります。8月景気ウォッチャー調査でワクチン先行き判断DIは49.7とぎりぎりで4カ月ぶり50割れになりましたが、「やや良くなる」という判断が「変わらない」に次いで多い状況です。日本の新型コロナワクチン接種を完了した人の割合は、9月13日のデータで50.04%に達しました。

コロナ禍であり様々なデータをみると明暗はありますが、景気の底堅さを感じられるものも多いようです。今月はそれらのいくつかを、身近なデータ、経済統計、株価からご紹介します。


13カ月ぶりの自殺者数減少

7月の完全失業率は2.8%と6月から0.1ポイント低下しました。小数点2位までみると、2.75%で、今年に入って7カ月連続で2%台継続となっています。2021年上半期の完全失業率は2.87%でした。

7月の有効求人倍率も1.15倍と6月から0.02ポイント上昇し、2020年5月の1.18倍以来の水準になりました。給付金、協力金、雇用調整助成金などの政策効果による下支えで、雇用は底堅く推移しています。もっとも、7月は感染力の高いコロナウイルスがまん延していることで、求職活動を手控える動きも出て数字の改善につながった面もあるようです。

7月の自殺者数が13カ月ぶり前年比減少と改善したことは7月の雇用統計の改善と整合的です。自殺の理由は、健康問題、家庭問題など様々ですが、経済生活問題が理由となることも多いです。警察庁「自殺統計」の自殺者数と完全失業率の年次データの相関係数を、データが存在する最長期間(1978年~2020年)で計算すると0.911と強い相関があることがわかります。

2020年の自殺者数の前年比は+4.5%の増加と、0.4ポイント上昇し2.8%になった完全失業率と同様に11年ぶりに悪化に転じました。自殺者数の2021年上半期1カ月平均は1,820人でした。前年同期の2020年上半期の同1,596人に比べて14.0%の増加でしたが、前期の2020年下半期の同1,917人に比べ▲5.1%と減少になっています。完全失業率も同様に、2021年上半期は2.87%で、2020年上半期2.57%からは悪化しましたが、2020年下半期2.99%からは改善しています。

7月の自殺者数暫定値は1,644人にとどまり前年同月比▲11.8%減少し、8月分速報値は1,643人で2020年8月から▲14.9%減少しました。このままのペースでいけば、2021年下半期の自殺者数は前年同期を下回りそうです。関連指標の完全失業率も前年同期の2.99%を下回る可能性が大きいでしょう。

身近なデータから見る景況感

7月家計調査で、もやし購入金額は73円、前年比▲15.1%です。2018年8月の72円以来の低水準になりました。節約料理に使用されることが多い、もやしの購入金額の減少は、人々の消費面の落ち着きを示唆しているようです。

大相撲秋場所の懸賞本数は事前申込段階で1,519本です。部屋の力士に新型コロナ感染者が出た宮城野部屋に所属する横綱白鵬は休場ですが、秋場所では、大関から怪我・病気で一時は序二段48枚目まで番付を下げた照ノ富士が新横綱となって土俵に上がっています。

事前申込段階の懸賞本数が多めなので、コロナ禍で最高だった今年初場所の1,270本を抜く可能性が高い状況です。秋場所初日〈9月13日〉の結びの一番で照ノ富士が手にした懸賞は29本で、先場所初日の結びの白鵬の取り組みの13本を上回りました。また先場所初日で最多だった、照ノ富士の取り組みに懸かった24本も上回りました。

7月の金融機関店舗強盗件数は今年2度目の0件で、1~7月合計は7件になりました。年間11件と過去最低だった2020年の1~7月合計と同じです。5年ごとの1年当たり平均値は、リーマンショックを含む2006年~10年の105件、2011年~15年の40件、2016年~20年の19件です。こうした数字と比べると低水準です。生活苦で思わず金融機関に強盗に入る人は少ないようです。

JRA(日本中央競馬会)の2020年の売得金は前年比+3.5%でネットでの馬券購入が健闘して9年連続増となりました。2021年も9月5日現在+4.9%の増加で、10年連続増加に向けて順調に推移しています。

菅首相が9月3日に自民党総裁選不出馬を表明しました。当日の日経平均株価は「菅首相、退陣へ」の速報を受けて後場に大きく上昇し前日比584円60銭上昇となりました。9月10日の終値は9月3日から1,253円73銭さらに上昇し30,381円84銭でした。

支持率が下がっていた菅総裁の下で自民党が衆院選で大敗するというシナリオが回避されたことから買われた面があるようです。去る人を大幅上昇で見送るような株式市場の冷酷な面が垣間見られた感じがします。なお、日本で五輪開催された年は総理大臣が交替していますが、今回もジンクス通りの展開となりました。

景気動向指数、直近7月分の一致CIは前月差▲0.1と2カ月ぶりに僅かな下降となったものの、基調判断は「改善」が継続しています。多少のもたつきはあっても、景気の基調が底堅いことを示唆する数字と言えそうです。

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