社説:サイバー攻撃 各国と連携し抑止急げ

© 株式会社京都新聞社

 社会のデジタル化が進む中、サイバー攻撃の脅威が増している。

 世界的に被害が拡大しているのが「ランサムウエア」と呼ばれるコンピューターウイルスだ。企業などのシステムに侵入して機密情報を暗号化し、復旧と引き換えに「身代金」を要求する。

 警察庁によると、今年上半期は国内で61件の被害報告があり、昨年下半期から40件増えた。

 新型コロナウイルス対策によるテレワーク拡大を背景に、ネットワークの隙が狙われている。セキュリティー意識を高め、システムの強化を図る必要がある。

 ランサムウエアの被害企業の中には復旧までの期間が1カ月以上に及んだり、費用が1千万円を超えたりした例も少なくなかった。

 金銭要求に応じなければ情報を公開すると脅す「二重恐喝」の手口が用いられた事例もある。

 自衛の基本は、ウイルス対策ソフトの導入やインストールされているソフトの随時更新、アクセス権限の制限などとされる。

 リモートワークで扱う情報や担当者の限定、暗号化などの再点検も欠かせない。

 だが、巧妙化する手口に対策が追いついていないのが現状だ。

 米国では、石油パイプライン事業者が攻撃を受けて操業停止に陥り、市民生活が混乱した。同社は約4億8千万円をハッカーに支払ったという。

 米情報セキュリティー会社が日本を含む主要7カ国を対象に行った調査では、攻撃を受けた組織や個人の約半数が身代金を相手に支払っていたことが分かった。

 一度支払うと再び攻撃される恐れも指摘される。社会的信用の失墜にもつながりかねず、ダメージは計り知れない。

 ランサムウエアに限らずサイバー攻撃はロシアや中国など国家レベルの関与が疑われている。国の安全にも関わる問題だ。

 バイデン米大統領は先月、「政府だけでは対応できない」として巨大IT企業や金融機関などに対策強化を呼び掛けた。グーグルなどは巨額資金を投じる方針を示した。

 民間も含めた国際的な協力が求められている。

 日本では、警視庁が4月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)など約200の機関に対するサイバー攻撃に関わったとして中国共産党員の男を書類送検した。

 警察庁は来年度、サイバー局を新設する。各国との連携で、サイバー犯罪の実態解明と抑止につなげてほしい。