ロッテ国吉佑樹は澤村拓一の“再来”か 途中加入してブレークした理由に迫る

ロッテ・国吉佑樹【画像:PLM】

国吉は6月にDeNAからロッテに移籍、8月に1軍昇格し「勝利の方程式」の一角に

6月にDeNAから交換トレードでロッテに加入し、8月13日に出場選手登録されて以降、国吉佑樹投手は故障離脱した唐川侑己投手の穴を埋め、佐々木千隼投手、益田直也投手と強力な「勝利の方程式」を形成している。ここまでの14イニングで許した失点はわずかに2。2勝1セーブ9ホールドの活躍を見せている。9月24日に30歳を迎える右腕が覚醒した理由はどこにあるのだろうか(成績は9月15日試合終了時点)。

国吉の年度別成績【表:PLM】

国吉は秀岳館高校から2009年育成ドラフト1位で横浜(現DeNA)に入団。プロ2年目の2011年途中に支配下登録され、2012年に先発ローテーションに加わり112回2/3を投げた。救援に配置転換された2014年には49試合で62回1/3を投げ、2セーブ14ホールドと活躍した。

2015年もブルペンの一角として防御率2.43をマークするも、2018年までの3年間は登板機会が大きく減少。それでも2019年に自己最多の53試合に登板して69回1/3を投げ、奪三振率10.51を記録した。昨年も42試合で10ホールド、防御率3.13と投球内容も良化。奪三振率は9.98と高い水準を維持し、ブルペンの貴重なピースとなっていた。

今年もロングリリーフとして登板を重ねたが、防御率は5.16と悪化。6月14日に有吉優樹投手とのトレードでロッテに移籍するも、故障の影響で7月までは登板がなかった。しかし、8月のリーグ再開後は戦列に加わり、セットアッパーとして素晴らしい投球を続けている。

国吉の2021年結果球割合【表:PLM】

奪三振率や与四球率は低下、打たせて取る投球にシフト

国吉が今季が投じた球種について見ていきたい。各打者の打席の最後に投じた、いわゆる「結果球」の割合を移籍前後に分けて紹介する。

DeNA時代とロッテ移籍後で、球種配分に大きな変化は見受けられない。ただ、ロッテ移籍後はツーシームをほぼ完全に封印し、フォークの割合を少し多くしているように、細かな違いが生じている。移籍前後のどちらも、決め球でもあるフォークの割合は10%前後。ロッテ移籍後は使用頻度が若干増加している。今季は速球とカットボールを軸に投球を組み立てているが、移籍後はその傾向にやや変化が見られた。

国吉の移籍前後の各種指標【表:PLM】

次に、移籍前後で記録した数字を基に、各種の指標について見ていきたい。

奪三振率、与四球率ともに移籍後は低下しており、K/BBは1.63と極端に悪い数字に。ロッテで抜群の安定感を発揮しているが、指標ではむしろ、DeNA時代のほうが良いという点はやや意外だ。

移籍前は三振を奪うことを主眼に置いた投球を繰り広げていたと考えられる。一方で、移籍後に記録した内野ゴロでのダブルプレーが14試合を投げた時点で3度もある点は見逃せない。奪三振率の低下も含め、打たせて取る投球へとシフトしつつあるという点が、各種の数字からも読み取れる。

国吉の球種別成績【表:PLM】

ゴロ率も奪三振率も高いカットボールはまさに「決め球」

続けて、国吉が移籍後に記録した球種別の成績を見ていきたい。

まず目を引くのが、被打率.200と抜群の安定感を誇っているカットボール。この球種は一般的には打たせて取るために用いられることが多く、国吉もカットボールで6つのゴロを打たせており、四球や犠打などを除いた打数全体のうち、ゴロが占める割合が.319に達している。

一方で、国吉のカットボールは140キロ台中盤に達する速度から鋭く曲がるため、三振を奪うための球としても頼ることができ、球種別で最多の7三振を奪っている。打たせて取る際にも、空振りを取る際にも使える、まさに「決め球」と呼ぶに相応しい球種だ。

DeNA時代の2019年に161キロを計測した快速球は、国吉にとって最大の持ち味の一つだ。しかし、移籍後は被打率.238と、3つの球種の中で最も高い数字に。速球で奪った三振が2つにとどまっている一方で、20打数のうちゴロが7つと、カットボールよりも速球のほうがゴロ比率が高くなっている。

フォークは結果球になった回数が6回とさほど多投してはいないが、うち3回が三振と、空振りを奪う球として一定の威力を発揮している。速球とカットボールの割合が多いからこそ、フォークの存在そのものが投球術の幅を広げている面もあるだろう。

昨年の澤村のような活躍、離脱中の唐川の穴を埋めている

ロッテはチーム全体の奪三振率が6.97とリーグで2番目に低く、投手陣全体が打たせて取る投球を展開する傾向に。国吉も移籍後は速球とカットボールでゴロを打たせており、各種の数字を見てもグラウンドボールピッチャーへのモデルチェンジが機能している。

選手の獲得や補強は対象の選手の特性や長所を調査した上で、チームにプラスになるという判断のもとで進められる。国吉と同じく昨季途中にトレード加入し、チームの2位フィニッシュに貢献した澤村拓一投手(レッドソックス)の再来のような活躍を見せる国吉の獲得は、期待通りの成果をもたらしているといえそうだ。

今季の防御率が1.88という素晴らしい投球を続けてきた唐川の離脱は、チームにとっても非常に大きな痛手となる可能性が高かった。その穴を最小限にとどめている国吉の存在は、チームが中断明けに好調を維持している大きな要因の一つとなっている。

今後も安定感のある投球を続け、チームに2005年以来となるリーグ優勝をもたらすことができるか。身長196センチの巨躯に違わぬ存在感を発揮している新戦力が、優勝争いを繰り広げるチームに勢いをもたらしているのは疑いようのないところだ。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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