河野太郎氏は脱原発を封印していない|奈良林直 反原発団体や立憲民主党と同一の主張を繰り返す河野太郎氏。当時外相だった河野氏は、何ら指摘されてもいないのに、国際原子力機関(IAEA)に対して、「日本はプルトニウムを減らす」と宣言してしまった。「河野談話」に匹敵する「第二の河野談話」である。

河野太郎氏は9月10日、自民党総裁選出馬表明の記者会見で、脱原発に関する質問に対し、「(原子力発電所の)安全性を確認して、使えるものは再稼働して使っていく」と答えた。このため大手各紙は「総裁候補として脱原発を封印」と報じたが、とんでもない誤報だ。河野氏は脱原発路線を封印などしていない。

再処理施設の運転開始阻止を主張

河野氏は11日朝の日本テレビ系列の報道番組「ウェークアップ」でも、「今の日本の軽水炉は耐用年数が40年、あるいは延長しても60年。安全が確認されているものは使っていく」と述べ、再び脱原発を封印するかのような発言をした。しかし同時に、「(使用済み核燃料の)再処理施設は要らなくなったから(運転開始を)やめる」と明言した。その理由として、「(プルトニウムを燃料に使う)高速増殖炉『もんじゅ』が廃炉になり、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出す必要がなくなった。(再処理施設を)きちんとやめるべきだ。核のゴミをどうするのか、テーブルに載せること必要だ」と語った。

この説明こそ、河野氏、反原発団体、立憲民主党など野党の前からの主張なのだ。日本各地の原発で保管されている使用済み燃料を青森県六ヶ所村の再処理施設で再処理できなくなれば、いずれ各原発の使用済み燃料プールが満杯になり、燃料交換ができず、原発は運転停止に追い込まれる。これが反原発勢力の戦略なのだ。総裁選を前に出版された河野氏の新著『日本を前に進める』(PHP新書)にも同じことが書いてあり、首相の権限があれば「やる気になればさまざまなことを実現」できると宣言している。

作成/奈良林直

反原発派と一心同体

河野氏は2017年2月に東京で開催された「日米原子力協定と日本のプルトニウム政策国際会議」に反原発団体や立憲民主党議員らと共に出席した。会議では「日米原子力協定自動延長阻止と六ヶ所再処理工場運転開始阻止、それによる原発運転阻止をめざす」との大会宣言が出された。

2017年9月に訪米団が派遣され、日本のプルトニウム蓄積に国際的懸念があると訴えた。それをNHKが同年10月30日の「クローズアップ現代+」で「“プルトニウム大国”日本~世界で広がる懸念~」と題して報道した。米国の有力者の大きな声を利用して日本政府に圧力をかけることを「ワシントン拡声器」と呼び、NHKが報道して当時の安倍政権に圧力をかけた。

当時外相だった河野氏は、何ら指摘されてもいないのに、国際原子力機関(IAEA)に対して、「日本はプルトニウムを減らす」と宣言してしまった。河野氏の父親の洋平氏が官房長官時代の1993年に戦時中の慰安婦問題で出して禍根を残した「河野談話」に匹敵する「第二の河野談話」である。

週刊文春9月9日号に、資源エネルギー庁の官僚に対して再生可能エネルギーの比率上乗せを迫る河野氏の恫喝が報じられた。河野氏が首相になれば、自民党の中枢が反原発派に乗っ取られ、逆らう閣僚や官僚は恫喝されるのではないか。(2021.09.14国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)

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