実はおなじみ?世界を席巻する韓国のキッズ・アニメーション

エンタメのいちジャンルとして日本にも定着した、韓国の映像コンテンツ。ただし「ドラマや映画はよく見ている」という人でも、アニメーションとなると、まだまだイメージが浮かばないかもしれない。

しかし、今、韓国では、ドラマや映画、音楽に続くコンテンツとしてアニメーションにも大きな期待が集まり、目覚ましい発展を遂げつつある。今回は、そんな韓国アニメーションの世界を、人気ジャンルや歴史、個性豊かな作り手たちといった、いくつかのポイントから見ていきたい。

「韓国のアニメーションについては、まったく知らない」という人にまず紹介したいのが、キッズ・アニメーションだ。

実は日本の子どもたちに人気を集めてきた アニメーションの中には、「韓国発」の作品も少なくない。代表的なものが、2003年に韓国で放送を開始した幼児向け作品「ポンポンポロロ」。元気なペンギン「ポロロ」と仲間たちの日常を描いた物語は爆発的な人気を呼び、「子どもたちの大統領」と呼ばれたポロロは、現在まで愛され続けるキャラクターとなった。

ポンポンポロロ

働く車たちがロボットに変形して活躍する「ロボカーポリー」(2011〜)も、世界80ヵ国以上で放映されている。この作品は、韓国のテレビアニメキャラクターとしては初めて、日本でのおもちゃの販売にも成功した。

この2本のアニメーションは、日本でも、地上波やアニメーション専門チャンネルなどで放送されたので、見たことがあるという人もいるかもしれない。

ドラマや映画を見ても分かる通り、韓国では3DCGなどの映像技術が高く、現在のアニメ制作にもそれが生かされている。アメリカや中国など、海外との合作作品も多く、無国籍な幼児向けアニメの分野に、多くの作品を送り出している。

一方、映画作品に目を移すと、大ヒットした『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)の物語前夜を描いたアニメーション『ソウル・ステーション/パンデミック』(2016)が、日本でも広く話題を集めた。

両作品を手掛けたのは、社会的なテーマを果敢に取り入れたパニック・スリラー作品を得意とするヨン・サンホ監督。短編アニメーションから出発後、長編『豚の王』(2011)、『フェイク〜我は神なり』(2013)で評価され、『新感染 ファイナル・エクスプレス』で実写映画へと進出している。

また、9月23日には、ヨン・サンホ監督も絶賛した、人気ウェブトゥーン原作の劇場用作品『整形水』(2020)が、日本で公開される。こちらは誰もが理想の容姿に変身できる謎の化粧品をキーアイテムとして、外見主義社会を鋭く風刺する大人のサイコ・スリラーだ。

さらに今年春には、『パラサイト 半地下の家族』(2019)のポン・ジュノ監督が、フルCGアニメーション映画を製作中との情報も発表された。学生時代にはストップモーション・アニメーションを自主制作したという彼が、自らの世界をアニメーションでどう表現するのか、ファンの期待を集めている。

韓国でも、アニメーションは長い間「子ども向けコンテンツ」という枠に縛られてきた。しかし、現在では、大人が見ても楽しめるものや、自主制作による多彩な作品が作られ、国際的な評価も高まっている。

この秋からは、2014年の登場以来爆発的な人気を得て、映画やミュージカル、ゲームなど、これまでにない規模のメディアミックスを展開しているテレビシリーズ「シンビ・アパート」も、日本での配信が始まった。韓国発のアニメーションの存在感は今後、ますます高まっていくことだろう。


Text:田中恵美(ライター・編集者)

Edited:佐藤結(ライター)

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