<社説>自民総裁選が告示 「辺野古」思考停止するな

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 実質的に次の首相を決める自民党総裁選が告示された。立候補した4氏の経歴やこれまでの行動から見ると、沖縄への冷淡さばかりが際立つ。 特に普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設では、いずれも辺野古を推進する現在の政府方針を追認する意向だ。

 軟弱地盤の存在や青天井の工費など客観的事実を基に「辺野古が唯一」という思考停止から脱却してもらいたい。

 立候補したのは河野太郎行政改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行の4氏だ。各氏の沖縄との関わりを見ると、県民との乖離(かいり)は明白だ。

 河野氏は第3次、第4次安倍内閣で外相、防衛相を歴任し、菅内閣では沖縄担当相を務める。辺野古については政府方針を繰り返すのみだ。しかも沖縄担当相として基地と振興策のリンク論、在沖米軍基地の英語教育活用に言及した。基地恒久化とも受け取れる発言は、はなはだ疑問だ。

 岸田氏は第1次安倍内閣、福田内閣で沖縄担当相を務めたほか、第2次、第3次安倍内閣では外相だった。担当相、外相として辺野古新基地を進めただけでなく、沖縄が求める地位協定改定には全く手を付けなかった。一貫して民意を顧みることはなかった。

 第1次安倍内閣で沖縄担当相を務めた高市氏も同様だ。野田氏は郵政相(当時)時代に県内でのマルチメディア産業集積を推進した。だが県関係国会議員と自民県連が、2013年に辺野古の県外移設公約を強引に撤回させられた「平成の琉球処分」といわれる問題では、両氏とも重要な役割を演じた。

 当時、政調会長の高市氏、総務会長の野田氏は共に県連や国会議員に圧力をかけ続けたという。地元の民意を無視して党本部の論理を押し付ける態度が正しいものなのか。

 沖縄関係以外の政策でも信頼感を得るにはほど遠い。森友学園の行政文書改ざん問題に対し、河野、岸田、高市の3氏は再調査に否定的だ。野田氏が公文書隠蔽(いんぺい)に対する解明チームの設置を掲げたものの、森友問題再調査に消極的な党内で実現は疑問だ。国民の多くが真相解明を求めるのに、安倍晋三前首相への忖度(そんたく)が続くなら存在意義がない。

 行政文書の改ざんだけでなく、憲法に基づく臨時国会召集要求を無視し続けた安倍・菅政権の延長線上にある政権になるのか。各候補だけでなく自民党も姿勢が問われる。

 届け出後の演説会では、各氏から「改革」など勇ましい言葉が続いた。特に高市氏は敵基地無力化能力に言及した。専守防衛を逸脱し、憲法の理念を踏みにじる発言であり、看過できない。

 コロナ後の経済再生など国内には重要課題が山積する。「国民政党」の看板倒れにならないよう自民党国会議員、党員には党利党略に偏らない新リーダーを誕生させるよう強く望む。