建国記念日迎えた北朝鮮、特別配給行うも国民からは不評

毎年9月9日は、1948年に朝鮮民主主義人民共和国が建国されたことを祝う9.9節だ。このような特別なお祝いの日「名節」には、特別配給が行われるのが一般的だ。

贈り物政治、つまり国民の心をモノで釣るのが北朝鮮政治の民心掌握術で、かつては最高指導者が「ありがたい存在」だという当局の宣伝も、それなりに効果があった。しかし、今ではその中身を巡って不満が渦巻き、逆効果となることもしばしばだ。今回、9.9節を祝う特別配給が行われたが、それも同様の結果を生んでしまった。

デイリーNKの北朝鮮内部の情報筋によると、国民に対してコメの配給が行われた。ただし、無償ではなく、市場価格よりも安い1キロあたり4000北朝鮮ウォン(約92円)での有償配給だ。北朝鮮は2002年の7.1経済管理改善措置以降、それまではタダ同然の価格である国定価格を引き上げ、配給を無償から有償に切り替えたが、今回もそれに従ったものと思われる。

首都・平壌では今月1日から8日までの間に配給が行われた。かつてなら、食糧が底をついた「絶糧世帯」を中心に配給が行われたが、今回はそのような基準は設けず全員に配給された。

一方、北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)では12日から配給が始まった。

通常、配給が行われる前には噂が流れるものだが、今回は何の噂もなかったところにいきなり配給の発表が行われたため、市民の間で期待が高まった。しかし、それはすぐに失望へと変わった。

当局は、3ヶ月分の食糧配給を行うと大々的に宣伝しているが、実際には2度に分けて15日分が配給されたに過ぎず、それすらも受け取れなかったという人が続出しているのだ。

昨年1月から始まったコロナ鎖国で国内経済も消費心理も萎縮しきっているが、そこに期待に満たない食糧配給が行われたことで、逆に市民の士気を下げる事態となっていると情報筋は伝えた。

1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のときのように、餓死者が続出するような状況になってはいないと思われるが、特別配給の品目がコメだけで、従来のように肉類、卵、油などが配給されないのを見ると、北朝鮮国民がかなりの耐乏生活を強いられていることには間違いないだろう。

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