雑貨やインテリアの魅力を知る人たちに、自身のお気に入りと欠かせない定番品を聞く「店主のお気に入りと定番品」。
今回訪れたのは金沢・尾張町にある『Cazahana』。研ぎ澄まされた感性と審美眼をベースに、独自の世界観を打ち出すインテリアショップです。
ギャラリーのような小空間。
『Cazahana』のある尾張町は、加賀藩主・前田利家が呼び寄せた尾張藩の商人たちによって発展した商人文化が残る町。老舗からオープン間もない新店まで、今もなおこの界隈には多くの店が軒を連ねています。
その中でもひときわ目を引くのが、登録有形文化財「旧松村商店」を活用した重厚感のある店構え。昭和モダニズムの影響を色濃く受け継いだこの建物が『Cazahana』の活動拠点です。
扉を開けると、そこはまるでギャラリーのような小空間。オーナーの宇佐見透さんがセレクトする洗練されたアイテムが美しく並べられています。
そのオープンから一貫して「これからも大切にしていきたいモノ」に価値を見出し、心地よい生活にフィットするプロダクトを多角的な視点でキュレーションし続けてきた宇佐見さん。
美しくデザインされた空間にばかり目を奪われがちですが、じつは空間づくりよりも大切にしているものがあると言います。
「さまざまな時代と時間が交差した歴史ある空間の中で、モノのもつ温度や背景、ストーリーを色濃く伝えるのが僕の役割。お客様がひとつひとつ手に取り、モノとじっくり対峙できる場所として、この空間を再構築していきたいと思っています」
売り買いだけにはとどまらない「人とモノとの出会い」。その可能性を広げるため、宇佐見さんは「お客さんとの対話」を大切にしているそうです。
普遍的な価値観のもとセレクトされた『Cazahana』のモノたち。そこからさらに厳選して、お店の定番アイテムと、宇佐見さん自身のお気に入りを聞いてみました。
■定番品:「HARPER」のルームスプレー
「HARPER」は、宇佐見さんが立ち上げたフレグランスブランド。このルームスプレーは、建築家やデザイナーなど実在する人物のイメージが香りで表現されています。
たとえば「RAY」は、20世紀以降のデザイン業界に多大な影響を与えたレイ・イームズをイメージ。実際にレイの自邸を訪れたこともある宇佐見さんは「レイの家はサンタモニカの海が見渡せる丘にあるのですが、そこにある大きな庭でレイが遊んでいる姿を想像しながら香りをデザインしました」と言います。
ひと吹きすると広がるフレッシュな香り。柑橘系の爽やかさ、そして新緑のような豊かな香りの奥には、ほんのりとエキゾチックな芳香も感じられました。
□お気に入り:「Carl Aubock」のU Keyring
19世紀初頭より伝統的なクラフトマンシップを継承し続ける、オーストリアの金属工房「カール・オーボック」。宇佐見さんが愛用するのは、その4代目によって生み出されたU字型のキーリングです。
シンプルなフォルムだからこそ際立つ、真鍮の美しい表情と艶色。使い込むごとに深みを増し、ゆっくりと質感が変化していく様が楽しめます。すべて無垢の真鍮で作られているので、見た目以上にずっしりと重く、存在感があるのも特徴。
円盤状のパーツは取り外し式のネジになっていて、そこからカギを着脱する仕組みになっています。
「HARPER」のループスプレーと「Carl Aubock」のU Keyring。このふたつの価値を、宇佐見さんが解きほぐしながら説明すると、不思議とそのモノがどんどん魅力的に感じてきました。だれが、いつ、どこで、なんのために、どんな思いで作ったのか。そうした背景を知ることも大切なんだと再認識させられた気がします。
Cazahana
カザハナ
石川県金沢市尾張町1-8-1 BNFM1F
TEL.076-225-8807
営業時間/11:00~19:00(日祝〜18:00)
定休日/木曜日
駐車場/近隣にコインパーキングあり
※こちらの情報は取材時点のものです。
(取材・文/ヨシヲカダイスケ、撮影/林 賢一郎)