「もっと向き合えば」後悔の父 不登校の長男、高校入試の朝に命絶つ

長男を自殺で亡くした木下さん。子どもたちに「ネットでも誰でもいいから気持ちを話して」と呼び掛ける(京都府向日市)

 雪がちらついていた。2000年2月、病院の霊安室で中学3年の長男と対面した京都府向日市の木下秀美さん(60)は言葉が出なかった。「なぜ学校に行けず、死を選ばなければならなかったのか」。それは今も重い問いとなっている。

 長男は中学2年から学校に行けなくなった。当時、校内は荒れ、授業が成立しない状況だった。長男は真面目な性格で、騒がしさで教員の声が聞こえず勉強も遅れがちになり、徐々に登校できなくなった。

 ただ自宅ではいつも笑顔だった。居間に来る時は「天才登場!」と言っては場を和ませた。木下さんは「今、思えば無理して笑顔を作っていたんだろう」と振り返る。そして、高校入試の当日朝、自宅で首をつって自ら命を絶った。遺書には「自分に自信がなくこのままだと、ろくな大人になれないと思いました。これ以上家族や先生にはめいわくがかけられないと思った」と書かれていた。

 木下さんは「仕事が忙しかったが、子どもの都合に合わせ、もっと向き合って話を聞けばよかった。学校とも関わり、情報を共有して、一緒に問題を解決すればよかった」と悔やむ。

 現在、精神保健福祉士の資格を取得し、「乙訓不登校を考える親の会『大地』」のアドバイザーを務める。今も学校に行くのがつらい子どもたちにはこう呼び掛ける。「しんどい思いをひとりで抱え込まず誰かに話してほしい。それはネットの世界でもいい。誰かがわかってくれると信じて。まず生きててほしい」

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