総裁選告示

 何を着て出掛けよう、お昼は何を食べる? 書店で気になった2冊の本、一度に買ったらどちらも読まないかも…私たちの毎日は、選択と決断の連続だ。だったら、できるだけ多くの選択肢から選びたいと考えるのは自然な感覚に思えるが▲人間の心理はそう単純ではないようだ。〈商品の選択肢が過剰に増えると、購入時の満足度や幸福感が低下する〉という心理学の研究はよく知られている▲選択肢が多過ぎると、何か見落としてはいないか、と選択への自信が揺らいだり、何だかどれも決め手に欠ける、と感じたりするらしい。〈選択の満足度は、選ばなかった選択肢への期待をすべて引き算して決まる〉と説明されることも▲前置きが長くなった。1人を選ぶ選挙に候補者が4人。選択肢は多いか、少ないか、適正規模か。自民党総裁選が始まった。「国民と笑い、国民と泣く」「丁寧で寛容な政治を」「日本を守り、未来を開く」「党の多様性を示さねば」-四氏四様の主張が並んだ▲「1強」の党内情勢が長く続いてきた。ところが、広範な支持を背景にそれを居抜きで引き継いだはずの現総裁は、再選を果たせずに1年で去る。転換点だ▲巨大与党はどんな形の再出発を選ぶのだろう。本命不在の混戦模様、投票権のない外野席から目を凝らしてみる。(智)

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