1991年に発売されたアルバム・ベスト50選:あらゆる分野の素晴らしい音楽が生まれた年

Photo: Paul Bergen/Redferns

おそらく多くの人には、1991年はヒットチャートを襲ったニルヴァーナの『Nevermind』がリリースされたことで、グランジが商業的に躍進した年として広く記憶されているだろう。しかし1991年のアルバムのリストにはあらゆる分野の素晴らしい音楽が含まれることになる。

ガース・ブルックスはカントリー・ミュージックでの革命的な動きを先導していたし、ギャング・スターらのヒップホップ・アーティストは、それに負けないくらい自らのジャンルの限界を広げようとしていた。

ちょっと表面を引っ掻いてその下に隠されたものを見てみると判るが、1991年は音楽について史上最高の年の一つだったと言ってもあながち偽りではない。だから、この1991年のベスト・アルバムのリストを、全ての興味津々の音楽ファンにとって楽しめる何かがあった年を掘り下げるための招待状だと思ってほしい。(リストは順不同)

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1. ガンズ・アンド・ローゼズ『Use Your Illusion I & II(ユーズ・ユア・イリュージョンI & II)』

同時リリースのこの2枚のアルバムで、ガンズ・アンド・ローゼズはブルースやクラシック音楽の要素を加えてそのハード・ロック・サウンドの幅を大きく広げた。また『Use Your Illusion I』には史上最も壮大なロック・ソングの一つである「November Rain」が含まれていた。

2. マッシヴ・アタック『Blue Lines(ブルー・ラインズ)』

「トリップ・ホップ」という用語はこのアルバムがリリースされた時にはまだあまり広く使われていなかったが、この分野で先駆的なイギリスはブリストル出身のマッシヴ・アタックのデビュー・アルバムは、史上初のトリップ・ホップ・アルバムとして広く認められている。

3. メタリカ『Black Album(メタリカ)』

一般的には『ブラック・アルバム』として知られるメタリカの同名タイトルの5作目のアルバムは、彼らにとってただのベストセラー・アルバムではなく、「Nothing Else Matters」や「Enter Sandman」といった曲を含む、ヘヴィーメタルをメインストリームの舞台に立たせた作品だ。

4. ピクシーズ『Trompe Le Monde(世界を騙せ)』

ピクシーズはその1991年のアルバムで、1990年リリースの『Bossanova(ボサノヴァ)』でのうねる波のようなサウンドを捨て、元々彼らの代名詞だった耳障りでノイジーなロック・サウンドに回帰した。

5. プライマル・スクリーム『Screamadelica(スクリーマデリカ)』

プライマル・スクリームの3作目のアルバムは、ロックの限界を大きく広げただけでなく、その後にやって来るエレクトロニック・ミュージックの未来の形を作った。

6. プライマス『Sailing The Seas Of Cheese(セーリング・ザ・シーズ・オブ・チーズ)』

「Jerry Was A Racecar Driver」や「Tommy The Cat」といった曲を含むアルバム『Sailing The Seas Of Cheese』は、ロックにおけるエレクトリック・ベースの新しい可能性を提示してみせた。

7. ザ・KLF『The White Room(ザ・ホワイト・ルーム)』

当初、制作中止になった同名映画のサウンドトラック盤として作られていたアルバム『The White Room』は、そこはかとなく映画的なエレクトロニック・ミュージック作品で、1991年のベスト・アルバムの一つだ。

8. ジ・オーブ『The Orb’s Adventures Beyond The Ultraworld(アドヴェンチャーズ・ビヨンド・ザ・ウルトラワールド)』

とてつもなく果てしなく2枚組に亘って広がる作品であるジ・オーブのデビュー作は、音声は幻覚的でサイケデリックなトリップを経験するような効果がある。

9. トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ『Into The Great Wide Open(イントゥ・ザ・グレート・ワイド・オープン)』

自分の超大ヒット・ソロ・アルバム『Full Moon Fever(フル・ムーン・フィーヴァー)』の後、それに匹敵するアルバムを作るのは不可能に近かったのだが、トム・ペティは1991年のアルバム『Into The Great Wide Open』でそれにとても近いことをやってのけたのだった。

10. セイント・エティエンヌ『Foxbase Alpha(フォックスベース・アルファ)』

ニール・ヤングの「Only Love Can Break Your Heart」の大胆なカバーを含むセイント・エティエンヌのデビュー・アルバムは、彼らの60年代ポップへの愛情と、クラブ的なビートそして洒落たサンプリングを融合させた作品だ。

11. スリント『Spiderland(スパイダーランド)』

ケンタッキー州出身のポスト・ロック・バンド、スリントの2作目で最後のアルバムはリリース当時はほとんど売れなかったが、その後同じスタイルを目指す無数のバンドにインスピレーションを与え、今ではカルト・クラシックとしての評価を得ている。

12. サウンドガーデン『Badmotorfinger(バッドモーターフィンガー)』

サウンドガーデンを最終的にメインストリームの成功に導いたのはこのアルバムではなかったが、『Badmotorfinger』はベースのベン・シェパードが参加した最初のアルバムで、彼の高い技術によって「Rusty Cage」などの曲でより完成度の高いサウンドを実現したのだった。

13. U2『Achtung Baby(アクトン・ベイビー)』

ブライアン・イーノが共同プロデュースした、U2の7作目のスタジオ・アルバム『Achtung Baby』は、彼らのアリーナ・ロックのスタイルに、インダストリアル・ロックやエレクトロニック音楽をはじめとする様々な音楽の影響が加わった作品だ。

14. 2パック『2Pacalypse Now(トゥパカリプス・ナウ)』

警察による暴力や構造的貧困の状況などヘビーなテーマを取り上げた2パックのデビュー・ソロ・アルバムは、世界で最も尊敬されたラッパーの一人である彼の作品群に入って行くための重要な作品だ。

14. ア・トライブ・コールド・クエスト『Low End Theory(ロウ・エンド・セオリー)』

ヒップホップ史上最も愛されたアルバムの一つである『The Low End Theory』はラップとジャズの間の隔たりを埋めた作品。発表から数十年経った今でも時を超えて愛されている。

15. ブラック・シープ『A Wolf In Sheep’s Clothing(ア・ウルフ・イン・シープス・クロウジング)』

不遜で風刺たっぷりなブラック・シープのデビュー作は、東海岸ラップの他のより陰鬱なスタイルのヒップホップ・アーティスト達とはちょっと違ったペースの作品を提供した。

16. ブラー『Leisure(レジャー)』

リーダーのデーモン・アルバーンが後に嫌いになったことで有名なアルバム『Leisure』だが、このアルバムはブラーが90年代イギリスの最高のギター・バンドの一つと評価される理由の一つとなった作品だ。

17. マライア・キャリー『Emotions(エモーションズ)』

アルバム『Emotions』で、マライア・キャリーは自分の作品についてのクリエイティブな面をよりコントロールするようになり、従来のソウルフルなポップのスタイルにディスコの切り口を加えた。

18. マーティ・スチュアート『Tempted』

ポップ・カントリーは時に評判が芳しくないかもしれないが、マーティ・スチュアートの1991年のアルバムは、ポップカントリーもやりようによっては素晴らしい作品になることを証明している。

19. マシュー・スウィート『Girlfriend(ガールフレンド)』

『Girlfriend』はマシュー・スウィートの失恋を歌った作品として知られているが、彼が巧みに作りあげたパワー・ポップは、失恋の悲しみなど吹き飛ばすような素晴らしさだ。

20. マッドハニー『Every Good Boy Deserves Fudge(良い子にFUDGE)』

マッドハニーはそのセカンド・アルバムを大手のレーベルから出すことになっていたのだが、そうではなくインディからリリースすることを決断し、西海岸北部シーンを象徴するサブ・ポップ・レコードの事業継続の可能性を支えた功績が広く評価されている。

21. N.W.A.『Efil4zaggin』

N.W.A.は比較的短命なグループだったが、彼らの2作目で最後のこのアルバムの爆発的な成功は、彼らのシーンに対する記念碑的なインパクトとその後も消えることのないレガシーの証明だ。

22. オービタル『Orbital(オービタル)』

彼らの祖先とも言えるクラウトロック(60年代後半〜70年代前半のドイツでの前衛的ロック・ムーブメント)のバンドからヒントを得た、オービタルの同名タイトルのデビュー・アルバムは、テクノ・ファン必聴だ。

23. オジー・オズボーン『No More Tears(NO MORE TEARS)』

「Mama, I’m Coming Home」やグラミー賞受賞の「I Don’t Want To Change The World」といった曲を含むこのアルバムは、オジー・オズボーンのキャリアにおけるハイライトというだけでなく、90年代メタルにおける画期的な作品だ。

24. レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『Blood Sugar Sex Magik(ブラッド・シュガー・セックス・マジック)』

リック・ルービンによるプロデュースで、「Under The Bridge」「Give It Away」そして「Suck My Kiss」といったファンク・ロックの名曲の数々を含むアルバム『Blood Sugar Sex Magik』は、レッチリが彼ら自身の真のグルーヴを見つけた瞬間を捉えた作品だ。

25. スリック・リック『The Ruler’s Back(帰ってきたスリック・リック)』

デビュー作のヤバい評判には及ばなかったかもしれないが、スリック・リックの2作目は彼の人生における重要な転換期を記した作品となった。

26. スマッシング・パンプキンズ『Gish(ギッシュ)』

スマッシング・パンプキンズのリーダー、ビリー・コーガンは、アルバム『Gish』でハード・ロックとゴシックなポスト・パンク・サウンドの完璧なバランスを発見した。

27. スティング『The Soul Cages(ソウル・ケージ)』

スティングの3作目のソロ・アルバム『The Soul Cages』は、ポリスのリーダーである彼の父親の死について、という悲痛なコンセプトによる作品だ。

28. スーパーチャンク『No Pocky For Kitty(ノー・ポッキー・フォー・キティ)』

スーパーチャンクの1990年の同名タイトルのデビュー作はバンドの魅力を十分に捉えた作品ではなかったが、その次のこのアルバムはこのインディを象徴するバンドをより適切に紹介した作品として機能している。

29. ボニー・レイット『Luck Of The Draw(ラック・オブ・ザ・ドロー)』

ボニー・レイットは、曲作りのために引きこもった時期にこの1991年のアルバムを書き上げて、同時期に活躍したブルース・アイコン、スティーヴィー・レイ・ヴォーンに捧げるとライナー・ノーツに記した。

30. ボーイズIIメン『Cooleyhighharmony(クーリーハイハーモニー)』

「Motownphilly」や「It’s So Hard To Say Goodbye To Yesterday(グッドバイ・トゥ・イエスタデイ)」といったヒットシングルを次々に生んだボーイズIIメンのデビュー作は、ファンクとヒップホップとジャズとR&Bの要素を一体化した、ニュー・ジャック・スイングの名盤だ。

31. デ・ラ・ソウル『De La Soul Is Dead(デ・ラ・ソウル・イズ・デッド)』

デ・ラ・ソウルはそのセカンド・アルバムで、従来のヒッピーっぽいイメージを捨て去って、より暗いイメージを打ち出したが、彼らの作品の面白さと影響力は少しも損なわれることはなかった。

32. ダイナソーJR.『Green Mind(グリーン・マインド)』

どちらかというとバンドのアルバムというよりは、J・マスシスのソロ・アルバム的に捉えられることが多いが、ダイナソーJr.の1991年のメジャー・レーベル・デビュー作は彼らのノイズ・ロックのルーツに立ち返った作品だ。

33. パブリック・エナミー『Apocalypse 91…The Enemy Strikes Back(黙示録91)』

『Apocalypse 91…The Enemy Strikes Back』は極めて短い期間でレコーディングされたアルバム。彼らが数年にわたって取り組んでいた音源が盗まれてしまったからだ。それでもこのアルバムには苦労の跡が感じられず、彼らがヒップホップ史上最高のグループの一つであることを証明している。

34. クイーン『Innuendo(イニュエンドウ)』

『Innuendo』はフレディ・マーキュリー存命中にリリースされた最後のクイーンのアルバムで、音楽史に残る最も輝けるボーカリストの一人であるフレディーの最後を飾るには完璧な作品だ。

35. R.E.M.『Out Of Time(アウト・オブ・タイム)』

R.E.M.は彼らの7作目のアルバムで、それまでのカルト・バンドからロック・ラジオの定番バンドに飛躍した。『Out Of Time』は3つのグラミー賞を受賞し、彼らの最大のヒットシングル「Losing My Religion」を生みだしたのだ。

36. リーバ・マッキンタイア『For My Broken Heart(フォー・マイ・ブロークン・ハート)』

そのライナー・ノーツに「私たち全ての悲しみにくれた者達のための癒やしの作品」と書かれた、リーバ・マッキンタイアの18作目のアルバムは、わずか1年足らず前に飛行機事故で命を絶たれた彼女のツアー・バンドのメンバー達に捧げられた、胸を打つ作品だ。

37. DJクイック『Quik Is The Name』

当初は低予算で作成したミックステープとして流通される予定だったDJクイックのデビュー作は、商業的成功を収めただけでなく、彼を当時の他のギャングスタ・ラッパー達と一線を画することになった作品だ。

38. フガジ『Steady Diet Of Nothing(ステディ・ダイエット・オブ・ナッシング)』

フガジの歴史を語る時にしばしば見逃されるのだが、彼らのセカンド・アルバムは、フガジのポスト・ハードコア・ムーブメントの伝説的グループとしての評価を固めた作品だ。

39. ギャング・スター『Step In The Arena(ステップ・イン・ジ・アリーナ)』

史上最高のヒップホップ・アルバムの一つとの評価を受けることの多い1991年の『Step In The Arena』は、ヒップホップシーンにおけるギャング・スターの高い地位を確固たるものにした。

40. マイ・ブラディ・バレンタイン『Loveless(愛なき世界)』

マイ・ブラディ・バレンタインは最初のシューゲイザー・バンドではなかったが、1991年のアルバム『Loveless』は史上最高のシューゲイザー・アルバムの一つとして引き合いに出されることが多い。

41. ニルヴァーナ『Nevermind(ネヴァーマインド)』

ロック界をまだヘア・メタル・バンド達が仕切っていた頃、ニルヴァーナの画期的アルバム『Nevermind』が驚きの大ヒットを収め、以降グランジこそが最先端の音楽トレンドであるという流れを打ち立てた。

42. パール・ジャム『Ten(ten)』

台頭しつつあったグランジへの熱狂とアリーナ・サイズのハード・ロックの周囲を巻き込むほどのエネルギーを一つにした、パール・ジャムのデビュー・アルバムは「Alive」や「Even Flow」といったヒット曲を含む現代のクラシックな名盤だ。

43. ガース・ブルックス『Ropin’ The Wind(アメリカの心)』

ガース・ブルックスの3作目のアルバムは、ビルボード誌の総合アルバム・チャートBillboard 200のトップを飾った自身初のアルバムで、カントリー・ミュージックがそのジャンルのファンを超える多くの人々にも魅力を持つことを証明した。

44. ジョデシィ『Forever My Lady(フォーエヴァー・マイ・レイディ)』

ジョデシィのデビュー・アルバムには90年代R&Bが最高の形で収められている。彼らの音楽は、ドレイク、ジェイ・Zそしてカーディ・Bといったラッパー達に明確な影響を残している。

45. ラ・マルディタ『El Circo』

メキシコ史上最大の売上を記録したロック・アルバムの一つ、『El Circo』は当時世界的に急速に台頭していたスペイン語ロック・ムーヴメントを英語圏に広めるきっかけとなった。

46. トーク・トーク『Laughing Stock(ラフィング・ストック)』

前作の『Spirit Of Eden(スピリット・オブ・エデン)』同様、トーク・トークの5作目にして最後のアルバムには多数のミュージシャン達がフィーチャーされたことで、まぎれもなく聴く者の息を潜めさせるような傑作が作り出された。

47. タニヤ・タッカー『What Do I Do With Me』

アルバム『What Do I Do With Me』では、同時代の女性カントリー・シンガー達の中でもほぼ間違いなくベストの部類に入る、タニヤ・タッカーの最高のボーカル・パフォーマンスのいくつかを聴くことができる。

48. ティーンエイジ・ファンクラブ『Bandwagonesque(バンドワゴネスク)』

ここ最近のロック界のアイコンである、ジミー・イート・ワールドのジム・アドキンスやデス・キャブ・フォー・キューティーのベン・ギバートが、1991年のこのティーンエイジ・ファンクラブの傑作3作目の大ファンであることを公言しているように、このアルバムは史上最高のオルタナティブ・ロック・アルバムの一つであるとの評価を受けることが多い。

49. テンプル・オブ・ザ・ドッグ『Temple Of The Dog(テンプル・オブ・ザ・ドッグ)』

サウンドガーデンのクリス・コーネルとパール・ジャムのメンバーで構成されたこのシアトルのスーパーグループは、マルファンクシャンやマザー・ラヴ・ボーンといったバンドでボーカルを取っていた故アンドリュー・ウッドに捧げたこのアルバム1枚しかリリースしていない。もちろん大ヒットしたのは「Hunger Strike」だが、その他にもこのアルバムには「Say Hello 2 Heaven」など珠玉の楽曲が多く含まれている。

50. トリーシャ・イヤウッド『Trisha Yearwood(トリーシャ・イヤウッド)』

一度聴いたらそれと判る彼女の歌声にスポットライトを当てた、トリーシャ・イヤウッドの同名タイトルのデビュー作は、90年代を代表することになる最大のカントリー・スターの登場を告げる作品だ。

Written By Sam Armstrong

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