【自民党総裁選】コロナ禍の政局、冷ややかな医療従事者「政治は苦しむ人救えない」

コロナ患者の治療に奔走する医療現場からは総裁選に対する思いが寄せられた(写真と本文は関係ありません)

 新型コロナウイルス感染症対策を喫緊の課題に、混戦模様の自民党総裁選。逼迫(ひっぱく)する医療現場に立つ医師や看護師は政治に何を思い、求めているか。

 自民党総裁選が始まった中で、横浜市内の中核病院で働く女性看護師(36)は「政治は弱い立場の人、苦しむ人を救えない」と不信感を募らせている。絶え間なく運び込まれるコロナ患者に寄り添う日々に、こみ上げてきた思いだ。

 ワクチン接種を希望する全ての高齢者に対し、政府は7月末までの接種完了を掲げた。同30日には菅義偉首相が「目標達成」を宣言したにも関わらず、8月には接種がかなわなかった80代男性の中等症患者が運び込まれた。予約方法が分からなかったといい、女性看護師は「対策の網からこぼれ落ちてしまった人は一定数いるはず」と訴える。

 夏まではコロナ禍を「これは天災。誰も責められない」と割り切っていたが、東京五輪のさなか、感染の再拡大とともに日々過酷さを増す現場に立ち、考えは変わったという。

 看護を担当した男性患者がコロナの症状を悪化させ、転院先で亡くなった。病床が埋まり、外来受け入れを何人も断ってきた。70代の女性患者からは回復後、涙ながらに「迷惑を掛けてごめんなさい」と謝られた。患者が自身を責める姿にやるせない気持ちが募る。次期首相には「自分の発言に責任を持ち、リーダーシップを示すこと」を求めたいという。

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