最高位スポンサー・トヨタ自動車が見せた五輪への“怒り“ 2030年「札幌五輪」に大打撃も

トヨタ自動車の豊田章男社長

国際オリンピック委員会(IOC)と最高位スポンサー契約を結ぶトヨタ自動車の豊田章男社長(65)が18日に三重・鈴鹿市内で行われた会見で、国内の自動車レースが新型コロナウイルス禍で中止となる現状について「五輪が許され、四輪や二輪は許されない。不公平と感じます」と言い放ち、波紋を呼んでいる。

国内の自動車レースはFIシリーズの日本グランプリ(10月、三重)、世界ラリー選手権「フォーラムエイト・ラリージャパン」(11月、愛知&岐阜)が中止。豊田社長は「モータースポーツ(の出場者)もアスリート。同じアスリートで、どうして入国に対して許可が違うのか、開催の判断が違うのか」と疑問を投げかけた。今回の発言はあくまで「日本自動車工業会会長として」だが、ネット上では「スポンサーなのによく言った!」「確かに不公平だ」と賛同の声が続出。五輪と四輪を引っ掛けたコメントは「座布団1枚!」と絶賛されるなど、改めて豊田社長の発言力の大きさがうかがえた。

五輪に対する強硬姿勢は今回だけではない。コロナ禍で世論の大半が中止を求めていた東京五輪開幕直前、トヨタ自動車は五輪関連の国内CMの見送りを発表。さらに豊田社長は開会式に出席しない方針を示した。こうした一連の〝トヨタの乱〟は「五輪スポンサーの価値を崩壊させるのでは」との意見も出ている。

トヨタ自動車は2015年3月、IOCと24年パリ五輪までのワールドワイドパートナー契約を締結。コカ・コーラ、パナソニック、ブリヂストンなど世界的企業が名を連ねる最高位スポンサーは最大名誉とされ、一流企業の証しとも言われてきた。しかし今回の一件を踏まえ、五輪関連の法曹関係者は「スポンサーになる意義を根底から覆す」と警鐘を鳴らし、スポーツマーケティングの専門家も「五輪商業主義の終わりの始まり。IOCの財政基盤を揺るがしかねない」と予測する。

豊田社長が開会式を回避した直後にはパナソニック、NTT、富士通などの幹部らが欠席を表明。今後は反五輪に追随するパートナーが続出し、〝雪崩式スポンサー離れ〟となる可能性もある。そうなると日本が招致に立候補している30年札幌冬季五輪への影響も大きい。かつての五輪ブランドは風前のともしびだ。

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