田澤純一が語る台湾の厳格なコロナ対策と中断期間で得た手応え「方向は間違いではない」

台湾プロ野球の味全に所属している田澤純一【写真:Getty Images】

5月中旬から2か月中断、シーズン再開もチームは低迷中

今季台湾プロ野球(CPBL)の味全ドラゴンズに加入し、守護神を務める田澤純一投手。ここまで36試合に登板して1勝3敗15セーブ、防御率3.55を記録。チームの勝ち星がなかなか伸びない中、リーグ2位となる15セーブを挙げるなど、気を吐いている。(9月15日現在)

新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、CPBLは5月17日から一時中断。当初は2週間ほどでの再開が見込まれたが、台湾では厳格な感染防止対策がとられている影響もあり、シーズンが再開したのは約2か月後の7月13日だった。CPBLでは1シーズンが前後期の2期制で行われているが、中断をはさんだこともあり、前期が終了したのは8月20日のこと。今季からリーグに再加入した味全はチームとして波に乗れず、前期は最下位で終了。同24日から始まった後期では勝ち越しを目指している。

9月10日の富邦戦では2回を2安打無失点で、台湾で初勝利をマーク。時速150キロを超えるストレートが増えるなど調子を上げている田澤は今、何を感じながら過ごしているのか。【聞き手・構成 / 佐藤直子】

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Full-Countをご覧の皆さん、田澤純一です。CPBLは後期が始まり、3週間が過ぎました。僕が所属する味全は新しいチームということもあり、試行錯誤が続いています。若い選手が多く、当初は2年後に勝てるチームになることを見据えるというチーム方針でしたが、成績不振が重なったこともあり、グレッグ・ヒバード投手コーチが解任されてしまいました。チーム作りの難しさを感じさせられた出来事です。

台湾の最優先事項は新型コロナ対策、五輪出場見送りも「淡々としていた」

感染経路が不明な新型コロナ感染者が増加したため、5月中旬からシーズンは一時中断。この時は野球だけではなく、台湾全土で全ての活動が止まっていました。基本的に外出できない状況だったので、数日間は練習もなし。再開後はチームを10人くらいのグループに分け、ジムやグラウンドで時間が重ならないように練習しました。6月に入ってからはライブBPで打者を相手に投げ、6月中旬からは週に2、3回、紅白戦をしながら調整する日々。シーズン再開の予定が何度か先延ばしになったので、実際に始まった時は「ようやく!」という思いがしました。

それにしても、台湾のコロナ対策は迅速で厳格です。台北ではマスクをしていなければ即罰金。市中感染が認められると、途端に感染状況の警戒レベルが引き上げられ、外出が制限されましたが、誰もが協力的でした。スーパーマーケットやコンビニは営業している一方、飲食店の大半は休業し選択肢は減ったように思います。僕は「Uber Eats」頼みの生活でした。練習で球場へ向かう車中から見た台北の街は、まるで時間が止まっているようでした。今では警戒レベルが下がり、街も動き始めています。

台湾ではコンビニ、飲食店、球場など、あらゆる場所の入口にQRコードが掲出されています。電車やバスにもあります。利用する人はスマホでQRコードを読み込んで、画面に出る送信ボタンを押す。すると、名前や電話番号などの情報が登録され、どこに何時にいたかという記録が残り、感染者と接触した可能性がある場合にはすぐに連絡が届く仕組みです。

誰もがコロナ対策が最優先事項だと考えているので、台湾球界として代表チームを東京五輪へ派遣しないと決定した時も、僕が見る限り周囲の人々は特に落胆することもなく、淡々としていたように思います。五輪終了後にメダリストが始球式に登場することがありましたが、五輪を感じたのはその時くらいでした。

開幕から大きく変わったチームの投手事情、守護神ながら幅広い起用を想定

シーズン中断中はオフから継続しているトレーニングに取り組みながら、それまでのパフォーマンスを振り返り、見つかった課題をクリアできるよう練習を重ねました。その結果、シーズン再開後は奪三振数が増えています。体の力がより効果的にボールに伝わるようになったのか、ストレートで打者を差し込めているようで、打者のタイミングの取り方が変わってきました。スプリットも中断前より変化の具合が良くなっているように思います。

球速が全てではありませんが、ストレートが(時速)150キロを超える回数が増え、平均では147キロくらいを維持できるようになりました。これもオフに筑波大学でアドバイスを受けながら、トレーニングを重ねてきた成果だと思います。自分が目指している方向は間違いではないし、まだまだ状態が上がりそうな手応えを感じています。

チームでは開幕当初から9回を任されてきましたが、チームとして8回に失点することが多かったため、途中で方針が変わり、8回を投げることもありました。最近はまた9回で落ち着いています。

投手コーチが解任されたり怪我人が出たりで、投手陣を巡る状況は開幕から大きく変化しています。後期を迎えるにあたり、改めて僕の役割をチームに確認したところ、セーブシチュエーションや同点の場面はもちろん、3点ビハインドくらいまでは頭に入れておいてほしいと伝えられました。

リードしている場面、同点の場面、追いかける場面では、気持ちの持っていき方もピッチング内容も大きく変わるので、正直なところ、これはなかなかタフな課題です(笑)。ただ、チームに行けと言われた場面でマウンドに上がり、結果を出すのが僕の仕事。投手としての幅が広がると信じて、自分の仕事に徹するのみです。

2か月の中断があったため、後期は11月21日まで続く予定です。あと2か月、まだまだたっぷり野球ができる時間があります。少しでもチームの勝利に貢献し、自分が成長できるような投球を続けていこうと思います。(田澤純一 / Junichi Tazawa)

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