ソフトバンク・昨年急逝の川村さんに届け「鍛えてもらった体で」リチャードら誓う恩返し

上林と笑顔を見せる川村さん(17年)

【取材の裏側 現場ノート】9月15日は1年前に急逝した川村隆史コンディショニング担当(享年55)の命日だった。選手に寄り添う姿勢や明るいキャラクターで誰からも愛された人で、この日は何人もの選手が自身のインスタグラムのストーリーズなどで感謝の思いを表した。売り出し中の若手・砂川リチャード内野手(22)もその一人だった。

印象に残っているシーンがある。昨季の終盤。ファームでの試合終了後に、リチャードがベンチに飾られていた川村さんのユニホームをそっと触り、たたずんでいる姿があった。「顔を思い浮かべて、今日も野球できているな、頑張ろうと思って」

昨季は育成選手ながらキャンプA組(一軍)に抜てきされると、オープン戦も最後まで一軍帯同。オープン戦終了後の3月16日に支配下選手に登録された。キャンプの際から足首を痛めていたが、支えてくれたのが川村さんだった。「頑張り時やぞ! 離脱だけはするなよ! 頑張っておけば支配下になれるからな」と言われながらテーピングを巻いてもらったという。その言葉に励まされて乗り切った。

また、キャンプA組にもつながった一昨年11月の台湾ウインターリーグ中にも温かく導いてもらった。疲労から1週間ほどウエートトレーニングに行けない時期があると、特に育成選手はウエートに行っている回数などをチェックされていることを教えてくれた上で「どうしても無理で体がきつい時は仕方ないけど、大丈夫な時は顔出すくらいはしたほうがいいよ」と声をかけてもらったという。

今年のキャンプ中も改めて川村さんへの感謝を口にして「ウエート室にもユニホームがあって、見るたびに顔を思い出します。言いそうなことも思い浮かびますし、今の俺ならこんなこと言われてるんだろうなって。頑張れと言ってくれるだろうなって」と話していた。

15日の円陣では長谷川勇也外野手(36)が「『これくらいで下を向いとったらあかんで』『ホークスはホークスらしく元気出していかなあかん』って言うと思う」。そして「川村さんに鍛えてもらった立派な体を使ってグラウンドで暴れましょう」と気持ちを込めた。

川村さんへの感謝を口にするのは、もちろんリチャードだけではない。選手の数だけ川村さんとの思い出があるはずだ。シーズンは佳境を迎えたが、最後までホークスらしく、川村さんに鍛えてもらった体で躍動する姿に期待したい。

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