10年後の発見に高まる期待。NASA火星探査車のシステムが地上テストで採取した岩石サンプル

【▲ 火星探査車「Perseverance」のサンプル採取・保管システムのテスト時に採取されたコアサンプルの1本(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

こちらの画像、台座に載せられているのは黒板用チョークほどの長さ(71.1mm)がある地球の岩石のサンプルです。一見何の変哲もない小さな棒状の岩ですが、10年後には同じようなサイズのサンプルが人類に大発見をもたらすかもしれません。

この岩は、アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査ミッション「マーズ2020」の探査車「Perseverance(パーセべランス、パーサヴィアランス)」に搭載されているサンプル採取・保管システムの地上テスト時に、玄武岩質の岩石から掘り出されたコアサンプルです。テストで採取されたコアサンプルは、画像のように試料トレイに移されてから結果が記録されました。

【▲ 2021年9月1日のサンプル採取後に撮影されたPerseveranceのコアリングビット(中央)。コアリングビット内部にセットされているチューブの中にサンプルが見えている(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS)】

マーズ2020ミッションの主な目的は火星に存在していたかもしれない微生物の痕跡を探すことですが、NASAは欧州宇宙機関(ESA)と共同で火星からのサンプルリターンミッションを計画しており、Perseveranceは火星探査史上初めて地球に運ばれる火星のサンプルを採取するという重要な役割も担っています。

2021年2月に火星のジェゼロ・クレーターへ着陸したPerseveranceは、同年9月1日と8日に「Rochette(ロシェット)」と呼ばれるブリーフケースサイズの岩から合計2本の岩石サンプルを採取することに成功しました。2本のコアサンプルは長さ15cmほどのチューブ状の容器に入っていて、現在はPerseveranceの車体下部に保管されています。マーズ2020ミッションでは全部で43本持ち込まれた保管容器のうち30本ほどを使ってサンプルを採取することが予定されており、今後もPerseveranceによるサンプル採取の旅は続きます。

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【▲ 火星サンプルリターンのコンセプト。サンプル保管容器はMAV先端に搭載された球形のコンテナに移し替えられた状態で火星の地表から打ち上げられ(左)、軌道上で帰還用の探査機がキャッチ(中央)。コンテナは回収カプセルに収容され、探査機によって地球まで運ばれる(右)(Credit: ESA/ATG Medialab)】

サンプルが入ったチューブは将来送り込まれる予定の回収用ローバーに拾い上げられることを見越して、Perseveranceが降り立ったジェゼロ・クレーターの地表に置かれることになっています。拾い集められたサンプル保管容器は着陸機に搭載される小型のロケットを使って火星の周回軌道上へ打ち上げられた後に、帰還用の探査機がキャッチして地球へ届けられる予定です。

サンプルが地球に到着するのは、早ければ10年後の2031年が計画されています。いまの小学生が社会人になる頃には火星の岩石が地球の研究施設で分析され、歴史に残る発見が世界中の人々を驚かせているかもしれません。

【▲ 火星探査車「Perseverance」(右)が撮影したセルフィー。Perseveranceの左奥には火星ヘリコプター「Ingenuity」の姿も見えている(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)】

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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