<金口木舌>映画と現実は違うが健康あってこそ

 映画「コンテイジョン」のテーマの一つはウイルスを媒介する他者との接触の危険性。人間同士の関わりがウイルスを拡大させていく

▼新開発ワクチンの接種で人々が抱き合って喜ぶ終幕は希望を抱かせる。ワクチンで人類は元の生活を取り戻せたが、現実は違うようだ

▼「ワクチンだけでは全てが解決しない」。新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は、接種が進んだ後もマスク着用などを当面の間継続すべきだと強調した

▼根拠は京都大の古瀬祐気特定准教授(感染症学)の衝撃的な分析だ。感染力が強いとされるデルタ株を念頭に置き、平均で対象年齢の75%程度が接種することを前提にした試算で、コロナ前の生活に戻った場合、150日間で累積死者数が10万人を超えることが示された。インフルエンザの10倍だ

▼イスラエルやシンガポールなどワクチン先進国でも感染が再拡大している。ワクチンによる集団免疫獲得の淡い期待は霧散した。しばらくはマスク着用や三密回避、換気の徹底などの行動制限を余儀なくされそうだ

▼宜野座村とイタリア・ペシャ市が姉妹都市締結20周年記念WEBコンサートを開催している。「共にコロナを乗り越え、友情と交流を深めよう」と誓い、宜野座とペシャは再会に思いをはせながら旧交を温める。今日は敬老の日。ふれあえないもどかしさはあるが、健康あってこそ希望は持てる。

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