「地元の人は泳がない川、危険と認識を」 相次ぐ水難事故、キャンプ客らに注意

水難死亡事故が発生した現場付近に設けられた看板(京都府笠置町有市)

 京都府南部の木津川で8月、釣り人、行楽客が流されて死亡する水難事故が相次いだ。木津川は流れが急な所も多く、大雨で増水すると危険が一気に増す。急きょ、看板を立ててキャンプに来た人たちに注意を促すが、遊泳などの禁止はできないという。地元の自治体や消防は「甘く見ず、怖い川だと認識してほしい」と訴える。

 相楽中部消防組合消防本部(木津川市)によると、今年8月末までの10年間で、管内の木津川(木津川市、笠置町、和束町、南山城村)の水難事故は12件発生し、9人が亡くなった。死亡事故8件のうち、5件は笠置町で発生している。

 8月22日、同町有市の潜没橋付近の河川敷で、バーベキューに来ていた30代男性が流されて死亡した。2014年には同じ場所で遊泳中の小学生が流されて亡くなった。

 男性が河川敷を訪れていた22日は雨が降っていなかったが、12~21日は雨が降り続け、多い時は1時間雨量が30ミリを超えた。上流にある水資源機構高山ダム管理所(南山城村)によると、貯水位を下げるため20日に最大で毎秒約200トンを放流。雨量が増え、ダムの放流が続くと川の水位は上昇し流れも強まる。同町有市の水位は数日雨が降らない状態の時は0.38メートルだが、22日正午の水位は1.19メートルだったという。

 今夏、緊急事態宣言で同町内の笠置キャンプ場が閉鎖される中、近くの河川敷に車で乗り入れ、テントを張ってキャンプする行楽客が絶えない。特に潜没橋の河川敷では連日、府外ナンバーの車が並び、ライフジャケットを着けずに川で遊ぶ家族連れの姿が目立った。

 同消防本部の吉田学署長は「木津川で地元の人はほとんど泳がない。普段は穏やかに見えても雨が降るとすぐに状況が変わる。危ない場所と知ってほしい」と強調する。

 国土交通省木津川上流河川事務所(三重県名張市)は8月27日、潜没橋の河川敷4カ所に「死亡事故発生」と書いた看板を設置した。以前から遊泳などの禁止を求める声も上がるが、笠置町の担当者は「河川法で遊泳禁止や河川敷の乗り入れを禁止することはできない。どういう対策ができるか調整していきたい」としている。

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